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仕事をするのはなんのため?

「障がい者と健常者の壁や固定観念を、エンタメの力で壊す」

NHKのファッションショーをきっかけに福祉関係のイベントに呼ばれるようになり、ファッションモデルを経験したけど、数は少ない。すぐに仕事というレベルにはいかなかった。

1年制の専門学校はあっという間に卒業。就職したテレビ関係の会社は、目指すものとは違っていた。

「高校を卒業したら一人暮らしをするこれは早く大人になりたかった私の夢。自立するためには仕事が必要だ。だけど働いているうちに、頭の中が「?」でいっぱいになってきた。

「モデルの仕事も続けていい」

そういう条件で就職したのに、成人式を迎え、髪をショッキングピンクにしたことを上司に何度も注意された。

お客さまに会う仕事なら、「会社員らしい髪型がいい」というのはわかる。でも、私の仕事はひたすらパソコンに向かうもの。そこはきっちりやっていた。

誰にも会わないのに、ピンクで何か問題が? 会社としての規則違反なら従ったけれど、そういうわけでもない。

上司Aさんは「いいよ、自由な髪で」と言い、上司Bさんは「すぐに黒髪にしてほしい」と言い、矛盾だらけで窮屈だった。

でも、もっともっと「?」なのは、私自身の気持ちだった。テレビ関係の会社だけど、やっている仕事は、目指すものと違ってる……。

「じゃあ、なんで働いているの?」心に聞いてみて、返ってきた答えは──「安定した仕事とお金」だった!

「安定とお金のために、ここで5年、10年と働くの?それでいいの?」

もう、心に聞くまでもなかった──答えはわかってる。自分らしくないことを我慢して続けたら、望む未来につながらない。

「これは本気でやったほうがいい!」16歳で両足を失ったモデル・葦原海がSNSに挑戦して感じた“環境の変化”_1
『私はないものを数えない。』より ©︎ Sumiyo IDA
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コロナで仕事激減! 収入3分の1の大ピンチ!

退職した私は、フリーランスでがんばることにした。学校や地方自治体から「講演をしてください」と声がかかれば、受けた。

グラビアにも、新商品発表会などのイベントにも挑戦した。フリーランスのモデルで、車椅子ユーザーの表現者。それが私の仕事。

会社員みたいに安定していないし、先の見通しもない。でも、熱量は倍増!前の仕事よりはずっと「自分らしい」気がしていた。

少しずつ、少しずつ。時間はかかっても、前へ、前へ。

道がないところを進んでいく──少しずつだけど、確かに進んでいた。ところが、新型コロナウイルスの感染拡大で学校は休校。イベントも講演会も中止。仕事がなくなってしまい、収入は3分の1になった。

えーっ、こんなことってあり?どうしよう? それで始めたのがTikTokとYouTubeでの動画配信だった。

「ぽっかり空いた時間で、新しいことに挑戦しよう」