稽古場の空気は風通しがよくて居心地がいい
──林さんは近年、舞台に精力的に出演されています。作・演出を手掛ける福原充則さんとは初タッグとなりますが、以前、福原さんの舞台を見て衝撃を受けたそうですね。憧れの福原演出を受けてみての感想は?
たまらないですね。次々と新しいアイデアが生まれる方なので、毎日ワクワクしています。すごく印象的だったのは、初めて本読みをしたときに「どんどん間違えてください」とおっしゃったことです。「みなさんが感じたこと、考えたことをそのまま自由に出してください。そこで見えてくるものがあると思いますから」という言葉に、この人についていけば間違いないと感じました。
もちろん、役者が自由に演じることを楽しんでくださる演出家の方は他にもいっぱいいるんですけど、福原さんは突き抜けていて、すべてのカンパニーの役者さんに期待し続けてくださるし、人柄や生き方に目を向けてくださる感じがします。福原さんがいる稽古場の空気はクリアで風通しがよくて、すごく居心地がいいです。
──これまでにない新たな自分の引き出しは開きそうですか?
過去に出演した舞台は、わりと声を張るキャラクターを演じることが多かったんです。でも今回は口数の少ないナイーブな役どころなので、映像のように普通に役を演じるだけでは見ている人に届かない気がしていて。本読みの段階から、自分の中で課題としていた“言葉を届ける”という表現に、きっと迷うだろうなと感じていたんです。
そこを福原さんに相談したら、「お芝居は自分だけでするものじゃない。相手役に届いてさえいたら、そのリアクションで言葉が届くこともある」と言われて、なるほどと思ったんです。新しい考えをいただけた気がしました。毎日のように新しいものを吸収できている感覚がありますね。
──武の師匠である深見千三郎を演じられる山本耕史さんとは、今回が初共演ですね。
初めてお会いしたときに、一瞬で「かっこいい」と思ったんです。山本耕史さんが生み出す空気感や、その場を支配するエネルギーに感動しましたし、それが深見という役と重なり合っていて。僕自身も気持ちが入っていきました。
──武が深見に憧れるように、林さんが男の人にかっこよさを見出すポイントは?
優しい人ですね。いつも、どんな人に対しても対等に、優しく接することができる人は余裕を感じますし、かっこいいと思います。
そういう意味で、武さんも山本さんも福原さんもみんなかっこいいです。自分の価値観で簡単に人を否定せず、おもしろがる器の大きさを感じます。