闇サイトが重宝される理由

「コロナ禍になってから、20〜30代の会社員とかが応募してくることが多くなった気がする。それまで若い女は借金があっても会社に黙って夜のバイトをするとかいう選択があったじゃん。けど、そういう仕事がコロナで減って、俺らみたいな仕事に飛びついてくることが多くなったみたい。年々警察の取り調べは厳しくなってるけど、俺らとしてはより優秀なヤツらを雇ってうまくやっていく感じになってる」(同前)

筆者が、2023年に面談した元半グレ幹部によると、闇サイトの発達・普及は、五菱会事件(五菱会とは、多重債務者リストをもとにDMを送り、無担保融資を募る闇金融のシステムを構築した組織です。借金の返済期限が近くなると、傘下の新たな闇金融が新規の融資を持ち掛け、借りた客の借金を膨らませるという悪質闇金融。)以降、当局が手配師を壊滅させたことの反作用ではないかと言います。

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昔は、闇金と裏社会が手配師を介して繫がっていたそうです。この手配師が、借金まみれの人間を犯罪に回す傾向があったのですが、この手配師が五菱会事件で失業したため、人員集めは、闇サイトに頼らざるを得なくなったのではないかと見ているのです。昨今では、借金が嵩んでも犯罪に手を染めようとする人間が減ったこともあり、余計に闇サイトが犯罪者に重宝されているそうです。

五菱会の闇金システムは、借金を返せなくなった人間を、他の闇金に流して、さらに借金させるシステムでしたから、犯罪を計画する者が、名簿や個人情報の重要性にも気付く契機にもなったのではないかとも指摘していました。

詐欺電話をかける「ハコ」や「ルーム」のリアル
元愚連隊タタキ専門だった山田氏の証言
増え続ける外国人半グレ組織

文/廣末登
写真/shutterstock

闇バイト 凶悪化する若者のリアル (祥伝社新書 683)
廣末 登
「即日高額案件ございます。ハイリスクハイリターン、全力でサポートします」大手求人サイトにまで載る闇バイト募集。若者が人生を搾取されてしまうその実態と勧誘システム_4
2023年7月3日
¥1,023
224ページ
ISBN:978-4396116835
「闇バイト」がなくならないワケとは?

二〇二三年一月一九日、東京都狛江市に住む九〇歳の女性が自宅で殺害されているのが見つかった。女性の遺体には激しい暴行の跡が見られ、これまでとは次元の違う強盗殺人事件として世間を震撼させた。
本件をきっかけに注目を集めたのが、「闇バイト」といわれる犯罪だ。指示役に集められた素性のバラバラな集団によって行なわれる犯罪で、同種の事件は後を絶たない。

中でも詐欺よりも手っ取り早く稼げる「タタキ(強盗)」の増加が危険視されている。本書では、非行経験のある犯罪学者が当事者たちを取材。

闇バイトを取り仕切る半グレや犯人の更生に従事した保護観察官の声から見えてくる、その真実とは。最終章では、闇バイトを生み出す日本社会の闇を分析。失うもののない「無敵の人」を生み続ける構造に警鐘を鳴らす
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