「マイナ保険証を返納したかどうか保険者側はわからない」という欠陥
なぜかと言えば、「マイナンバーカードの返納先」(=自治体)と「資格確認書の発行元」(=保険者)は異なるため、現行の仕組みでは保険者は誰がマイナンバーカードを返納したのかを確認する手段がないのだ。
つまり、カード返納者が続出する中、「マイナ保険証を保有しない全員に資格確認書を発行する」という総理説明の実現性は大変疑わしい。そして、この事実は問題の首相会見のわずか3日前(8月1日)の立憲民主党 国対ヒアリングで厚労省等の官僚が明確に認めている。
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【長妻昭議員】(続出するトラブルに不安を感じて)保険証を紐つけたマイナンバーカードを返した方にも自動的に資格確認書は送られる? つまり、マイナンバーカードを始めから持っていなかった方と同じ扱いになる?
【官僚】そういう扱いにしなければと考えているが、カードを返した先は地方公共団体である市町村のため、(保険者の)健康保険組合としては返したかどうか分からない。本人に聞いてみるとか、本人から連絡を頂くことも別途して頂かないといけない。
【長妻昭議員】保険証に紐づけたマイナンバーカードを役所に返しても、紐付けは解除されないと聞いたことがあるが本当か? そうだとするとカードを返しても(システム上は)マイナ保険証を持った認識のままなので、その方には資格確認書は送られないということ?
【官僚】今のシステム上では、おっしゃる通り。
出典:2023年8月1日 立憲民主党 国対ヒアリング
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*映像は「立憲民主党国会情報」YouTube(リンク先の26分55秒〜28分50秒)で視聴可能
このやり取りで官僚は「いちいち本人に確認しない限り、マイナ保険証を自治体に返納したかどうか保険者側は分からない」と素直に認めた。だとすると、このままではマイナンバーカード返納者を中心に資格確認書が送付されない人が続出することは必至だ。
このまま来年秋以降に紙の保険証が廃止されれば、マイナ保険証を所有せず資格確認書が届かなかった人は医療機関受診時に資格確認の手段が無くなる。つまり、保険料を支払っているにもかかわらず窓口で10割の自己負担を求められ、実質的な無保険状態に陥ってしまう。