大人気のインスタグラマーには100万ドルをちらつかせ

ベータテスターになるために、なおかつ、アプリをいかに改善するかについてリアルタイムで示唆を与え、同時にプラットフォームを成長させるために、トップクリエイターへ支払う額は安くはない。

もしエイミーではクリエイターに1人あたり月に600ドルが支払われていたとすると、バイトダンスは初期のクリエイティブチームに少なくとも年間14万4000ドルを費やしていた。

大人気のインスタグラマーには100万ドルをちらつかせようとも、ティックトックは広告費をブランド構築に必要な経費としてそれを取り戻すことができる。

2020年6月現在、インフィード広告、つまり画面をエンドレスにスクロールしながら見られる動画は最長15秒に対して最少でも2万5000ドルかかる。

1秒あたり1667ドルとはクールだ。

もしあなたがもっと絶好の位置が欲しいなら、ユーザーがアプリを開けると動画が上映されるようにするなら、21万~24万ドルほどの経費がかかる。ハッシュタグチャレンジとは、ユーザーが真似をするような奇妙な行動や特徴的なハッシュタグをつけて投稿することだが、これは17万5000ドルからスタートする。

そしてプラットフォームに参加しているクリエイターもまた稼ぐことができる。

一つのサービスであるアーティストインフルエンスは、レコード発売元と動画で音楽を使用するティックトックインフルエンサーとの間で、ブローカーとして行動することが許される。

「インフルエンサーがそれぞれ個性的なコンテンツを投稿することで、ネットワークは作動するが、そのあいだ、あなたの音楽はもっぱら彼らのコンテンツで用いられている」と会社は主張する。

「音楽はコンテンツを通して、インフルエンサーを熱心な視聴者へと導き、その結果クリック率が高くなる。あなたの音楽がティックトックで100万人の人に届くのにかかる費用は350ドルだ。500万人だと1600ドル。2000万人に届けるには4800ドル。

サービスを提供している会社は、ワーナーレコード、ソニーミュージック、ユニバーサルミュージックグループ、ライブネイションのようなところと仕事をしてきたと言っている。


文/クリス・ストークル・ウォーカー 翻訳/村山 寿美子 写真/shutterstock

#1『TikTokの創業者ジャン・イーミンとは何者だ…元マイクロソフト、AI時代の到来を予測し2011年に起業した驚くべき天才の正体』はこちらから

#2『TikTokで無限に繰り返されるスクロールの中毒性…「集中力が一瞬でなくなる」悪魔的アルゴリズムの恐怖の中身』はこちらから

#3『TikTok 、2年9カ月で利用者5500万から7億人に…クリエイター育成に1000億円以上の投資する最強・最新の戦略』はこちらから

『最強AI TikTokが世界を呑み込む』(小学館集英社プロダクション)
クリス・ストークル・ウォーカー (著)、村山 寿美子 (翻訳)
記者、政治アドバイザー…TikTokがかき集めた異業種からの転職者。これぞ、有名インフルエンサーを濡れ手に泡の金で誘惑する「中国的戦略」_5
2023/7/21
2,090円
320ページ
ISBN:978-4796880459
アメリカが恐れる中国発のAI技術とは?

ダウンロード数35億、売上高10兆円超。
アメリカ・シリコンバレー製ではない、
中国発アプリが初めて世界を席巻している。

なぜ、中国のテック企業が世界中を熱狂させるアプリを開発できたのか?
なぜ、GAFAを凌ぐ勢いで成長し続けているのか?

TikTok人気とは反対に、このモンスターアプリを生んだ「バイトダンス」の経営については、
あまり知られていない。

気鋭のイギリス人ジャーナリストが、社員や人気ティックトッカ―、
開発・運営の関係者や政治家まで、多数の人々に取材。
・有望AI企業の買収
・独自のアルゴリズムの構築
・1,000億円以上を投資するクリエイター育成
・人気インフルエンサーによるプロモーション
など、これまで謎に包まれてきた新興テック企業の世界戦略に迫る!

中国初の世界的SNSから、ITの最前線や世界情勢まで、私たちの未来が見えてくる!

【推薦コメント】
「「15秒で一発当てる」――刹那の楽園の裏側には無限に進化するAIがある。
中国発にして中国初のグローバルプラットフォームの成長と矛盾を解明する」
―楠木 建(一橋大学特任教授)

「世界で最もダイナミックなソーシャルネットワークを支えている技術を紹介。
ビジネス分析がスリラーのように読める」
―アジーム・アズハール(『エクスポネンシャル・ビュー』創業者)

「TikTokは、おそらく、これまでに作られた中で最も急速に成長し、
最も中毒性の高いソーシャルメディアツール。
本書は、その仕組みと影響を理解するのに不可欠だ」
―ダミアン・コリンズ(元英国議会デジタル・文化・メディア・スポーツ特別委員会委員長

「中国のプラットフォームの比類ない幅広さと成長の規模に、驚くべき深さと壮大な知恵を合わせた。
シリコンバレーの覇権を脅かす中国初のグローバルプラットフォームの台頭という壮大な物語を、
ジャーナリスティックな物語と最先端の学術研究を融合させて紡ぎ出したのは、他のどの著者も成し得なかった」
―デイビッド・クレイグ教授(南カリフォルニア大学) 
amazon