当初からバイトダンスは〝グーグルレベルにボーダーレス〟
彼は世界規模の革命が起こると予見し、自分の会社をその中心的存在にしたいと思っていた。当初からバイトダンスは〝グーグルレベルにボーダーレス〟な会社になるべくスタートした。
バイトダンスは「内涵段子(ネイハンドワンズー)」というアプリを公開した。その名は大ざっぱに訳すと「匂わせ(ほのめかしの)ジョーク」となる。
これは、ユーザーがインターネット・ミームをシェアできるシンプルなアプリだ。それは、たくさんのおもしろ画像が存在する画像ホスティングウェブサイトのイミジャー(Imgur)やGIF、Redditを折衷したようなアプリで、そこで多くの画像がシェアされている。
内涵段子は大人気を博し、最盛期には2億人のユーザーを抱えるまでに急成長した。インターネットの奇妙な一面をまっとうに受け継いだかたちで、このアプリのユーザーは最もコミットされた投稿者だったといえる。
彼らはアプリとのつながりを賛美する商品を創造し、買い求めたのだ。彼らはコミュニティ以上のものを築きあげるために駐車場に集まり、写真を撮って自分たちの奇妙さを賛美した。
彼らには、仲間のユーザーを見つけるために使っていた「On Earth」というやや破壊的な賛歌ともいうべきものがあった。
ときには、赤信号で車を停め、ちょっとひねくれた心とユーモアを愛する気持ちをもった誰かが近くにいないか確かめながら、車のクラクションを使った暗号メッセージを発することもあった。そのうち、クラクションの音があまりにやかましく、あちこちで聞かれるようになってきたため、クラクションの使用禁止を発令する町まで出てきた。
TikTok以外にもいろいろある…バイトダンスのアプリ
バイトダンスは「トウティアオ」という新たなアプリも開発していた。
アプリを開くたびに、ユーザーは自分の好みに合わせたニュース価値のある記事を提供される。そのデータ需要は膨大だ。ユーザーの読みたいものを特定し、大量の情報やニュース記事を取捨選択してユーザーに提供するには、リソースをきわめて集中的に消費する。
2017年には、北京のトウティアオ・ドゥオーフビルと呼ばれた建物内で何百人ものエンジニアが働いていた。彼らは、会社のメイン会議室としての役割を果たすガラスで囲まれた中央の空間を中心に自由に並べられたデスクで、プログラミングや雑多な仕事をこなしていた。
スタッフは急激に成長するべく、アプリを必死になって開発していた。中国のグーグルとも呼ばれる「百度(バイドゥ)」からバイトダンスに転職したあるエンジニアによると、両社の労働倫理は天と地ほどの差があったという。
飛躍的な発展を遂げ、世間を騒がせている若い企業とそのアプリ、トウティアオはおおむね継続的に成長していた。
社員はそれを、創業当初の混沌として無秩序なフェイスブックの1階にいるようなものだとたとえている(そして、バイトダンスはマーク・ザッカーバーグの会社と並ぶほど大きくなり、高く評価され、現在のフェイスブックと同じくらい人々の生活において重要な役割を果たすだろうと信じている)。
バイトダンスの副社長ヤン・チェンユアンの話によると、2018年にトウティアオは1500ペタバイト、つまり15億ギガバイト以上のデータストレージを使用していた。
さらに、1日に処理されるデータ量は50ペタバイトで、それはネットフリックスで2時間のHD動画をおよそ200万本分流すのに匹敵する。もっともトウティアオにそれだけのコンテンツがあったわけではないが。
このアプリは公開当初、元の報道機関の許可なしに集めた記事をアプリ内で提供していると批判を受けていた。また、元記事にある他の商品の広告が新たな広告に替えられ、トウティアオを通して販売されることで、アプリ側が上前をはねていると主張する声まで上がっていた。