脱ぎたがる男、脱ぎたがらない女
――奥田監督の映画は暴力やドラッグやセックスも描いていますけど、実は女性の性描写はめちゃめちゃ優しいですよね
奥田 例えば、私は「チ●コ出せ!」って言われたら出せますけど、やっぱり女の人が裸になるのってすごい負担じゃないですか。なので、どうしても必要だったら、それは本人の同意を得て脱いでもらいます。でも、別に必要ないんだったら、全然脱ぐ必要はないと思っています。
呂布 僕は女の人が脱ぎたがらない理由を理解できないんですよね。男ってすぐ出せるけど、男が出して歓迎されることってないじゃないですか。だけど、女の人がオッパイ出したらみんな歓迎する。誰も嫌な思いをしないのに、頑なに出そうとしない。あの捻れは何なんすかね。本来、逆だろうと思うんですけど。
奥田 やっぱり出すと、価値が下がっていくからじゃないですか。実際、女優さんって人気がなくなってくると脱ぎがちっていうとこもあると思います。女優を志すのであれば、それは作品によっては脱がざるを得ないときは、覚悟しておいてほしいですけど。
呂布 グラドルとかAV女優が、俳優業に転身していって、いろいろ言ってたのに、結局しょうもない映画のただの脱ぎ要員とかで使われたりするのを見ると、泣きたくなります。今までの水着は何だったんだって。だったら「脱がないで!」と思うし、安い脱がされ方する場合もあるわけですよ。
奥田 こんなんで女優を脱がせんじゃねぇぞって思うときはありますよ。自分はもう自分の筋みたいなものを堅持してないと自分がダメになっちゃうから、それだけは守ろうと思って生きてますけど。周りの大人を見ていると、別にそうではないんだなって思うこともあります。
――呂布さんはラッパーとして一本筋を通しているけど、大衆へのアジャスト力もすごいなと思います。
呂布 僕はそれこそ奥田監督じゃないですけど、自分の筋みたいなものはあります。そこを他人から口出しされたくないんで、なるべく他人にも口出しをしないようにしています。変なヤツいるなと思ったら、その変な部分が何で変なのか知りたいし、あんまり否定はしないですね。自分のルールって、自分でしかわからないから。人の変だなと思うところはそういう生き物なんだと思って、話を聞くようにしています。
奥田 映画を作っていると、それを矯正されることがあるんですよね。「出資してるし、お前の筋なんか通させないよ」みたいな。そこの戦いなんですよ。
呂布 自費でやれないのは大変ですね。
奥田 だからずっとなんでオレは映画を選んだんだろうって今でも考えます。音楽でもなく、小説でも絵画でもなく。
《後編》へつづく
#2 『クズとブスとゲス』の奥田監督が殴られて、騙されて、裏切られて585万円の借金をしても映画を撮り続ける理由《ラッパー・呂布カルマ×映画監督・奥田庸介 後編》
取材・文/荒川イギータ 撮影/高木陽春
映画「青春墓場」絶賛公開中
2023年9月1日から東京・下北沢シモキタ-エキマエ-シネマ「K2」で東京再上映