日本映画は政治かクリエイティブか……
――奥田監督の撮る映画って男くさいですよね。今、映画業界ってそういう映画がどんどん少なくなっているように思います。
奥田 もともと邦画って左寄りなところがあって、偏ってるんですよ。その傾向が一層激化しているような気がしています。だから、明らかに完成度としては絶対獲れるはずなんてない作品でも日本アカデミー賞に選ばれちゃったりすることもあるんですよね。
呂布 自分も日本アカデミー賞を獲る映画って苦手なやつが多いですね。監督が悪いのか、脚本が悪いのかわかんないですけど……。
奥田 両方じゃないですか。政治なんですよ、映画って。だから、邦画はクリエイティブより政治色が強いんです。海外だと「才能があるから」ってポンと予算付けるみたいな例はまだあるかもだけど、日本ではあんまり聞かないですね。
――そんな中で本当に自分が面白いと思うものを撮ろうとしたら、どうしていくのがいいでしょうか?
奥田 もうヤケクソになるしかないですよね。私みたいに社会に馴染めず、自分の世界観を堅持していることに固執したがために、映画業界でしか生きられなかった人間が、今更その邦画っていう社会で、長いものに巻かれようとしてもムリなんで。
最近の若い監督ってみんな優秀だし、優等生なんですよ。でも別に彼らは作家とは呼べないと思っています。私は作家だから、できないものはできない。それでも映画を撮る機会に恵まれたら、自分は「これで最後だな」と思って撮っています。
呂布 脚本を書くのと、監督をするのと、役者をするのと、それぞれ全然別の作業じゃないですか。監督は全部されてますけど、本当にやりたいのはどれなんですか?
奥田 これはわかんないんですね。最初が1本数万円レベルの自主映画からスタートして、それが原体験になっていて、全部自分でやるスタイルが染みついちゃってるんで。ただ、俳優としてはもう本当に『クズとブスとゲス』を撮った後、EDになっちゃって…。
呂布 なんで?
奥田 いや、わかんない。大量に精神安定剤も飲んでたし、危険な飲み合わせも気にせず飲んでたんすよ。そしたら3か月ぐらい勃たなくなって。やっぱり、監督をやって脚本も書いてってなると、その世界観を誰よりもわかってるから普通の俳優より深い部分まで考えて、演じなきゃいけないわけですよ。だから精神的にすごいダメージがあって。
呂布 なるほど
奥田 やっぱ勃っていたいじゃないですか。
呂布 まぁそうっすね。