ナルミの自己中心的な行動をたしなめる人は、誰もいなかった

学級委員の選出では、ナルミは自分に票を入れた。開票してみると、ナルミに入った票は1票のみだった。

「私が学級委員をやってあげようと思ったのに!」

家でナルミが怒りながら話をすると、祖父は「みんなわかってないよなぁ」と同調した。そして、機嫌を直すようにとはやりのゲームを買ってあげた。

ナルミの自己中心的な行動をたしなめる人は、誰もいなかった。

彼女の家庭内暴力が始まったのは、小学校高学年からだ。
不満を持つと、まずは家の中にあるものを壊す。ガラスを割り、冷蔵庫の中身を放り出すなどして暴れる。どこにそんなパワーがあるのかと思うほど、そういうときの力は強く手が付けられなかった。誰かしら大人が止めに入ると、殴る蹴るの暴行を加えるようになり、警察沙汰になったこともある。

しかし、地元の名士である祖父が取り繕うことで、問題は明るみに出なかった。

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写真はイメージです

そしてホストクラブにはまってしまった

その後、なんとか高校に進学したナルミだったが、すぐに不適応を起こし一年生のうちに退学。「家事手伝い」と称して家にいる日々だ。おこづかいは、親か祖父からもらえばいい。きれいな服を買って、化粧をして、ふらふらと出かけたり遊んだりしていればいい。
 
でも、ナルミは心の底では気づいていた。きれいに着飾っていても、家族以外の誰からも相手にされていないことを。ちゃんと話を聞いてくれる友だちなんていないのだ。
 
ところが、ホストクラブに行ったことで一変した。ここでは、お姫様扱いされる。お金さえ出せば、みんな自分の言うことを何でも聞いてくれる。ナルミにとって、素晴らしく快適な空間だった。
 
とくにゴウというホストは、ナルミのタイプだった。やさしくて、ナルミのことをたくさん褒めてくれる。少し頼りなげな雰囲気も好きだった。

「今月の売上、足りなくて」

ゴウがそう言うと、ナルミは数十万円もするシャンパンを注文。同伴出勤も頻繁にして、「ナルミがいないとダメだ」と思わせようとした。

「アタシに任せて」