原価はレモンサワーが20円台、ハイボールが30円

その傾向がとりわけ顕著だったのが、新宿歌舞伎町だ。JR新宿駅東口から歩いて、『歌舞伎町一番街』と書かれた巨大アーチをくぐると、安さを強調する店看板の数々が、否が応にも目に飛び込んでくる。

アーチから歩いて30mほど先には、『毎日、何杯でもハイボール50円』の居酒屋が。ちなみに生ビール(中)が299円、サワー全品99円、ワイン99円と他の酒類も激安だった。

ハイボール50円、生ビール90円!“コロナ解禁”で過熱する居酒屋「激安戦争」の内情_1
東京・歌舞伎町では「1杯100円以下」をうたう店が続々

この店の数軒先にある焼鳥屋の看板には、『ハイボール・レモンサワー いつでも何杯飲んでも1杯99円』とある。さらにその数軒先には、『いつでも何時でも レモンサワー ハイボール 50円』の居酒屋があった。

「歌舞伎町一番街には、コロナ前からハイボールを50円で出す店がありました。コロナ禍に入り、昨年9月末に緊急事態宣言が解除されたあと、レモンサワーとハイボールが50円の居酒屋がオープンし、今年3月にまん防が解除されると、1杯100円以下に値下げする店が他にもかなり増えました。新宿の相場では2~3000円は掛かる2時間飲み放題も、この辺りでは1000円以下で提供する店が増えています」(歌舞伎町・居酒屋店主)

そう話すこの店主の店は、4月から350円の席料を無料に、生ビールを290円、サワー・ハイボールを190円に値下げしたという。普通ならこれでも十分安いが、「1杯50円」を掲げる店に囲まれるなかでは、むしろ高いと錯覚するほどに歌舞伎町の値下げ競争は苛烈になっている。

どの店も赤字覚悟、ということだろうか? 歌舞伎町の居酒屋のオーナーがこう話す。

「レモンサワー1杯の原価は、アルコール度数35度の焼酎を使えば50円程度ですが、20度の安価な焼酎を使えば20円台まで下がります。ハイボールもサントリーの角瓶だと難しいですが、安価なウイスキーを使えば30円くらい。つまり1杯50円で黒字になるか赤字になるかは、使うお酒次第なんです。

今、歌舞伎町では原価率の高いビールではなく、原価率の低いレモンサワーやハイボールを主戦場に低価格競争が起きています。生ビールの原価は、銘柄によっても違うけど、中サイズで120~150円するのが一般的だから、驚くほど安い価格には下げられないという事情があるんです」