手嶋 果たして、習近平政権はこれに激しく反発し、「報復」に打って出ました。中台の中間線を越えて「重要軍事演習」を敢行し、台湾を取り囲むように9発の弾道ミサイルを発射し、このうち5発は日本のEEZ(排他的経済水域)に落下しました。

北京の指導部は、弾道ミサイルに実弾を込めるよう前線の部隊に命じました。1996年の台湾危機では空砲でしたから、緊張のステージは明らかに高まっています。これに対抗して米海軍も原子力空母「ロナルド・レーガン」を中核とする空母打撃群をフィリピン海に出動させました。

佐藤 台湾海峡を実弾が飛び交う事態になれば、日本列島も台湾有事から無縁ではいられません。

手嶋 日米の安保体制は、究極のところ、台湾有事に備えたものですから、米中が相戦うことになれば、台湾有事は、直ちに日本有事に転化します。米軍基地が置かれている日本列島は、中国が放つミサイルの標的になります。

#1【ウクライナ戦争と連動する台湾危機】「核心的利益」を支え合うと誓った習近平とプーチンの本当の企みとは…

『ウクライナ戦争の嘘-米露中北の打算・野望・本音』(中央公論新社) 
手嶋 龍一 佐藤 優
2023年6月8日
256ページ
ISBN:978-4-12-150796-9
ウクライナに軍事侵攻したロシアは言語道断だが、「民主主義をめぐる正義の戦い」を掲げるウクライナと、米国をはじめとする西側諸国にも看過できない深謀遠慮がある。戦争で利益を得ているのは誰かと詰めれば、米露中北の「嘘」と野望と打算、その本音のすべてが見えてくる。世界は迫りくる核戦争の恐怖を回避できるのか。停戦への道はあるのか。ロシアと米国を知り尽くした両著者がウクライナ戦争をめぐる虚実に迫る。

・アメリカはウクライナ戦争の「管理人」
・ゼレンスキーは第三次世界大戦を待望している?
・英国秘密情報部が「情報」と「プロパガンダ」を一緒くたにする怖さ
・戦場で漁夫の利を貪る北朝鮮の不気味
・ロシアがウクライナ最大の軍産複合体を攻撃しないわけ
・米国とゼレンスキーは戦争を止められたはずだ
・戦争のルールが書き換えられてゆく恐怖
・恐るべきバイデンの老人力
・プーチンが核兵器に手をかけるとき
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