拷問や危険ドラッグの裏ネタの情報源は世間話

精神科医の香山リカ氏もTwitterで「『子ども支援』に関わる人は見てほしい」と言うほどだ。例えば6話目でシャネルちゃんが「わたし漢字読めないんだよね」というセリフもまた心に突き刺さる言葉だが、アウトローの世界に触れていると、年代問わず漢字が読めない人を見かけるという。

「漢字が読めない、計算ができない、九九もできないという人は年代問わずいます。それとシャネルちゃんやその他の登場人物もご飯を食べるシーンで握り箸をしていたり、ちひろちゃんが手づかみでご飯を食べていますが、裏社会を生きる人たちが食事のマナーや作法を身につけていないというのは珍しいことではありません。彼らの幼少期の環境の悪さを目の当たりにする瞬間ですね」

【漫画あり】最もコスパのいい拷問とは…。ヤキ入れで大切なのは「相手に本気で今日、ここで死ぬんだ」と思わせること。問題作『地元最高!』を手がける会社員・草下シンヤ_4
カップラーメンをご馳走だと信じて疑わないキャラも…

実際にはあってはならないことだが、悪の世界においては理に叶っていると感じるシーンやセリフも多く存在する。それが、紅麗亞(クレア)先輩が後輩のシャネルちゃんやちひろちゃんに「ヤキ入れは徹底的にやれ」と説教するエピソードだ。

【漫画あり】最もコスパのいい拷問とは…。ヤキ入れで大切なのは「相手に本気で今日、ここで死ぬんだ」と思わせること。問題作『地元最高!』を手がける会社員・草下シンヤ_5
拷問や犯罪の極意に説得力があるのも草下氏の膨大な取材による知識の賜物

「中途半端な暴力ではなく想像を絶する痛みを与え続け、相手に本気で『私は今日、ここで死ぬんだ』と思わせる。そこで止めれば、『殺さないでくれてありがとう』と感謝の気持ちに変わる、というシーンですね。これは武闘派ヤクザに聞いた話です。
66話目に紅麗亜先輩が拷問するシーンで足の裏をバールでぶっ叩くシーンも、復讐屋が行っているものです。足の裏は痛めつけてもバレにくい上に神経がたくさん走っているので痛みをより効果的に与えられるため、“コスパがいい”そうです」

【漫画あり】最もコスパのいい拷問とは…。ヤキ入れで大切なのは「相手に本気で今日、ここで死ぬんだ」と思わせること。問題作『地元最高!』を手がける会社員・草下シンヤ_6
顔や露出した肌を傷つけないので見た目にバレにくい点でもコスパのいい拷問だという

ヤクザに復讐屋に半グレに強盗(タタキ)…。さまざまな危険な人たちを取材する草下氏だが、実際は世間話から聞くことがほとんどだという。

「こうしたインタビューを受ける場においては、便宜上、“取材”という言葉を使うことが多いですが、ほとんどが世間話の中で聞くことが多いです。
例えば、今日はかつてハッカーとか危険ドラッグの売人だった友人とランチしたんです。すると、今、アメリカで乱用拡大が大問題になってる通称“ゾンビドラッグ”(動物用鎮静剤のキシラジンとオピオイド鎮痛薬のフェンタニルを組み合わせたドラッグ)は実は彼が2010年当時に売人をしていた時も扱っていたって話になったんです。
当時、日本で広がらなくて本当によかったと思いましたよ…。こんな感じで、いろんな方と食事やお茶する中で情報が自然と入ってきます」