恋が始まる時、箱根へのドライブ
映画の撮影が始まるに際し、メリーは「山本さん、2人を一緒に連れて行って、食事でもして」と配慮をみせた。ちょうど翌日が2人とも休みだったことから、山本は買ったばかりのベンツで2人を迎えに行った。
運転好きの近藤は山本のクルマに興味津々で、「山本さん、ドライブ行きましょうよ」と声を掛けてきた。
「結局、マッチがハンドルを握り、助手席には明菜、そしてバックシートには私が座りました。起きているのも何かバツが悪い感じがして、2人には『俺は後ろでひっくり返っているからな』とひと声掛けました」
ベンツは夜中の高速を箱根方面に向かった。山本が続ける。
「2人の会話を聞くともなく聞いていると、ベストテンで2人が共演した時、次の出番が誰で、あの日はこうだったよねと他愛もないことを楽しそうに話していました。2人は恋愛にはまだ程遠い、本当に初々しい感じで、微笑ましかった」
箱根ターンパイクを通り、都心に戻りかけた時、マッチは思い出したように「お腹が空いた」と声を上げた。ただ、トップアイドル2人を連れて行ける店があるはずもなく、山本は帰る途中にある自宅に2人を誘った。そして就寝している家人を起こさないようこっそりパスタを作って2人に食べさせ、ベンツでそれぞれ送り届けたという。
撮影期間中は、2人に交際を感じさせるような動きは微塵もなかった。
しかし、2人に注目するマスコミの取材はヒートアップしていた。映画後半の舞台となった鹿児島県の徳之島でのロケに集まったマスコミは約300人。制作陣は、鹿児島からシャワールームやベッドルームまで備えたマイクロバスを2台手配し、マッチと明菜の2人を別々にして、それぞれの事務所スタッフが乗り込めるよう段取りを組んだ。