#1 戦国の世きってのダークヒーロー
#2 運命の主君、浦上宗景との出会い
#4 遂に始まる、宇喜多直家の血塗られた歴史
日本史上最大の乱世をエンタメに
15世紀末、世情の不安定化や室町幕府の権威の低下に伴い、各地を治めていた守護大名に代わって戦国大名が台頭し始め、領土拡大のための戦を行うようになった。
この1467年の応仁の乱から1603年に徳川家康が江戸幕府を開くまでのおよそ150年間は戦国時代、安土桃山時代と呼ばれ、日本史上最大の乱世だったのである。
現在放送中のNHK大河ドラマ『どうする家康』でもわかるように、日本の歴史の中でも特に人気が高く、これまでにも数多のドラマが描かれ、武将の生き様にスポットライトが当てられてきた。
ちなみに、戦国時代の一つ手前の室町時代での全国の守護大名のうち、安土桃山時代に大名として栄えたのは上杉家、小笠原家、島津家など8家しかないと言われており、かの有名な織田家や豊臣家が栄えたのは、説明するまでもなく「下克上」が行われたからである。
下位のものが上位のものを、政治的あるいは軍事的に打倒し権力を奪取する下剋上が世の常であった戦国時代を数多く描いてきた漫画家の重野なおきさんの最新作が、今回紹介する『殺っちゃえ!! 宇喜多さん』である。
戦国最怖大名として恐れられた、宇喜多直家の生涯を描いた話題の漫画の担当編集者に、重野なおきさんの魅力を聞いた。
――これまで黒田官兵衛や真田幸村、明智光秀など一貫して戦国時代に活躍した人々を描いてきた重野なおき先生の魅力を、担当編集者視点で教えてください。
血なまぐささとは切っても切れないのが戦国という残酷な時代です。そんな戦国時代の人間模様と真正面から渡り合って、その上で必ずエンタメとして落とし込んでくれる絶対的な信頼感です。
重野先生は、現代を生きる私たちは「歴史を字で追いがちだ」と指摘した上で、戦国4コマの使命は歴史上の人物を「生きた人間」として描き伝えることだと言っています。
その使命感に加え、ネタ作りのためであっても「歴史上の事実は絶対に変えない」「すべての武将に敬意を持つ」というストイックさ、その背中は戦国時代を生きる求道者のように頼もしいです。
次のページからは、宇喜多直家の代名詞ともなった「暗殺」を、初めて意識するきっかけとなるシーンを紹介する。主君浦上宗景(うらがみむねかげ)から命じられたのは、祖父の命を奪った島村盛実(しまむらもりざね)と、なんと宇喜多の妻の実の父、中山信正(なかやまのぶまさ)を討てという命だった。