なぜパックご飯の需要が増すのか

コメの需要が減るなか、パックご飯の需要が増す。一見矛盾したこの現象は次のように謎解きできる。

コメ以外を主食にすることが増えた理由の一つは、炊くのが面倒だから。無洗米を使う場合もあるにせよ、一般的にはコメを研いで水を吸わせて、40分から50分かけて炊飯して蒸らす。食事のなかでは調理時間が長い。

ご飯を炊く時間はない。でも、あたたかいご飯を食べたい。そんな需要にピタリとはまったのが、パックご飯というわけだ。

自宅で炊飯する場合に比べて、パックご飯は高価なものだ。それでも買い求められるのは、ご飯を炊く時間と手間を買われているとも言える。

予想以上に需要が伸び、いまや「サトウのごはん」は品薄状態になっている。そこで、約45億円をかけて既存のパックご飯専用工場の「聖籠ファクトリー」に新たな生産ラインを増設し、2024年に稼働させる。増設により「サトウのごはん」の生産能力は、現在の日産約103万食から123万食まで拡大する。年間4億食が供給できる計算だ。

そもそも、聖籠ファクトリーは、同社にとって3つ目のパックご飯専用工場だ。2019年に約50億円を投じて建てられ、日産20万食、年間6500万食の生産能力を持っている。
大幅な増産を可能にする工場だったのだが、それでも間に合わず、今回生産ラインを増設するに至った。

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米飯の生産能力は現在の150%まで拡大するだろう

業界関係者はパックご飯の将来をこう占う。

「市場規模は700億円程度で、まだまだ小さい。顧客は、高齢者が非常に多く、高齢化につれて、需要も増えると想定される。時短という部分でも、まだまだ使ってもらえる場面はあるはずで、将来的にはコメ全体の一%程度を使うまで拡大しうる」

パックご飯同様、主食用米の需要が減るなかで右肩上がりの成長を見せるのが、冷凍炒飯だ。炒飯のほかにピラフやおにぎり、その他の米飯類を含む冷凍米飯全体は、ここ数年伸びが鈍化している。そんななか、炒飯は成長を続けてきた。
 
冷凍食品大手の株式会社ニチレイフーズは、今後も冷凍炒飯の市場規模は広がり続けると予測している。船橋市に炒飯やピラフといった米飯専用の工場を持つが、「東西二拠点体制で旺盛な需要に対応」するとして、福岡県宗像市に約115億円を投じて米飯工場を建設する。完成すれば、炒飯をはじめ、炒める工程の伴う米飯の生産能力が現在の150%まで拡大するという。

2021年時点の冷凍炒飯の国内生産量は約10万トン、冷凍米飯全体だと約19万6000トンになる(一般社団法人日本冷凍食品協会調べ)。

冷凍炒飯にせよ、パックご飯にせよ、成長を続けるのは間違いない。原料としてのコメの需要は年を経るごとに拡大するだろう。こうした旺盛な需要を捉えていくことが、今後のコメ産地には欠かせない。

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