今の社会は子供たちの承認欲求を満たしにくい
定時制高校の50代の教員が言う。
「大多数の一般的な生徒は、そんなことはしません。きちんとスマホやSNSを使いこなしています。一方、昔の非行と同じで、そうしたことをする生徒は、いろんな問題を抱えている子が多いのです。家で虐待を受けている、中学時代にいじめられていた、メンタルヘルス面での問題がある、生活が困窮している、などです。
そうしたことが原因で、自尊心がかなり低い生徒たちがいます。だから、ああいう動画を撮って人を馬鹿にして、自分の優位性を高めようとするのでしょう。間違った自己顕示欲の発散法なのですが、生徒にしてみれば、それをしなければ心が満たされないんだと思います。それをやることがストレスを解消する方法になってしまっているんです」
日常に困難を抱えている子供たちが、誤った手段によってストレスを解消し、心を満たそうとすることは昔からあったことだ。
ただ、昔のような露骨ないじめや暴走行為をするには、それなりの労力が必要だったし、捕まった時のリスクも大きかった。その点、スマホを使った動画撮影は、ハードルが格段に低い。また、拡散されて話題になった時の満足度や中毒性も高い。ゆえに、それらがより軽い気持ちで行われているのかもしれない。
教員は言う。
「最近心配しているのは、そうは言ってもごく普通に見える生徒たちも、こうした行為に加担する傾向があることです。実際に客テロやバイトテロの子だってごく普通の大学生だったりしますよね。
背景にあるのは、今の社会が子供たちにとって承認欲求を満たしにくいものになっているからではないでしょうか。良いか悪いかは別にしても、昔は部活動だとか、学園祭だとか、いろんなところに子供たちの承認欲求を満たしてくれる場がありました。
しかし、最近はそれが減っている。そこらへんが一つの問題の気もします」
承認欲求を持つのは、人として当然のことだ。これまで子供たちはいろんな形でそれを満たしてきた。