対戦相手も観客も視聴者も号泣

顎を砕かれても葛西と対戦できた喜びを明かしたデスペラード。そんな男気に葛西は惚れた。そして決まった再戦だったがデスペラードが戦前、東京スポーツの取材に「燃え尽きて死んでもいいくらいの覚悟でやる」とコメントをした。

「生きて帰ることがデスマッチ」を自らの魂に刻み込んでいる葛西にとってリスペクトしている男だからこそ「死んでもいいくらいの覚悟」の言葉に憤った。
そして試合の3日前となる9月9日に自身のツイッターにこの記事をリツイートし「葛西純の覚悟はデスペと真逆だ。葛西純は『デスペの心を折って、生きて帰る覚悟しかない』 どちらの覚悟が大きいのか? どちらの覚悟が正義なのか? 答えは12日にわかる」と綴った。

そして迎えた9・12国立代々木競技場第二体育館での再戦。試合には敗れたが、葛西はどうしてもデスペラードに伝えたかった。

「死んでもいい覚悟なんて捨ててしまえ!」と。

葛西のメッセージに覆面を引き裂かれ素顔になったデスペラードは号泣し、観客も涙を流した。
葛西は言う。

「世の中には、生きたいのに死んじまうヤツがゴマンといる。死んでもいい覚悟なんていらねぇんだよ」数えきれないほどの傷を負ってきたプロレスラー葛西純がデスマッチで闘い続ける執念_5
試合後のリングマイクを伝える動画には「挫けそうになったらこの動画を見返す…私も頑張って生きようと思う」といったコメントが相次いだ

「負けたからこそ、まだまだ俺は伸びしろがある、頑張らないといけないと思える試合だった。何より俺っちの思いがデスペに伝わったことがうれしかった」

葛西にとってデスマッチは「生」と「命」の賛歌なのだ。そんな信念が芽生え、固まった試合が2009年、2012年にあった。

(#2へつづく)

「言葉はいらない」プロレスラー葛西純の生き様が刻まれた写真集(すべての画像を見るをクリック)

「世の中には、生きたいのに死んじまうヤツがゴマンといる。死んでもいい覚悟なんていらねぇんだよ」数えきれないほどの傷を負ってきたプロレスラー葛西純がデスマッチで闘い続ける執念_6
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#2 風俗通いでHIV感染も覚悟した葛西純が夢だったプロレスラーになった理由
#3 なぜ48歳のプロレスラー・葛西純の試合は人の心を熱くさせるのか?

取材・文/中井浩一   撮影/下城英悟