“宮沢氷魚”という人が、
どう存在しているのかを残したいと思った
俳優、モデルとして活躍中の宮沢氷魚さん。2023年3月に『メンズノンノ』専属モデルを卒業するにあたり、その集大成となる初の写真集『Next Journey』が発売されました。京都と沖縄で撮影された宮沢さんのさまざまな表情、そして魅力が詰まった一冊には、『メンズノンノ』モデルとして活躍した7年間の想いが込められています。写真集完成までの経緯やお気に入りの写真、さらに「本」とのエピソードについて宮沢さんにじっくりお話を伺いました。
撮影=栗原達也/スタイリスト=松川 総/ヘアメイク=吉田太郎(W)
写真集については最初、カッコいいファッション系にするプランだとかいろいろと案が出ていたんですけど、僕の中では『メンズノンノ』でモデルとしてやってきたこの7年間で、モデルとしてだけでなく“宮沢氷魚”という人の生き方や、生きてきた中でどう変わってきたか、どう存在しているのかを残したいと思って。それで、僕のオフの姿や旅をしているところを切り取った写真集にしたいと思ったんです。
タイトルを決める時、まず「旅」がテーマなので「Journey」という言葉は使いたいと思ったのですが、「Next」という言葉も入れたいなと。というのも『メンズノンノ』で7年間、すごい“旅”をさせてもらって。僕が初めて受かったオーディションが『メンズノンノ』のモデルオーディションだったんです。それがなければ今の僕はないだろうし、今までこの世界で僕がしてきた旅は『メンズノンノ』のおかげでもある。そこへの感謝も持ちつつ、今年29歳、30歳も近付いてきて新しい旅に挑戦したいなという想いが生まれたので、『Next Journey』というタイトルをつけました。
撮影場所は、当初は海外、たとえばアメリカだとしたら自分が通っていた大学のある街や生まれた地域、自分になじみのある場所で撮りたいと思ったんですけど、なかなか状況的に難しくて。だったら日本で自分にゆかりのある場所にしようと、映画『レジェンド&バタフライ』の撮影で魅了された京都と、朝ドラ『ちむどんどん』でお世話になった沖縄に決めました。僕が純粋に行きたいところや興味のある場所で撮影させていただいたんですが、撮影前は、どういうふうにひとつの作品として違和感なく成立させられるか、って不安なところもありました。でも、写真を見たらその不安はなくなりましたね。僕の想いに応えてくださったスタッフさんたちの力があって完成したなと思います。
撮影を振り返ると、楽しかったなってことにつきますね。写真集ってページも多いし、カメラマンの尾身(沙紀)さんはずっと僕を撮ってくれているけど飽きないのかな、とか心配はあったけど、実際撮影が始まったら途中から撮られている感じがなくなって。普通に旅をしながらいろいろな景色を見て、いろいろな服を着て……流れに身を任せてやれた感じがします。撮影中に尾身さんが、「木にくっついて」「葉っぱと戯れて」とかおもしろい指示をしてきて、「どうすればいいんだ?(笑)」と不思議に思う場面はありましたけど(笑)。そういえば、京都での撮影最終日に台風が直撃してしまって、急きょ予定を変更して飛行機で沖縄に飛ぶ、なんてこともありましたね。そのドタバタ感も“旅のよさ”という感じがして楽しかったです。
写真のセレクトは、スタッフさんと一緒にさせていただきました。雑誌の誌面では、たくさんモデルがいる中のひとりだけど、丸々一冊自分だけとなると、「たくさん自分がいる」って不思議な気持ちになりましたね(笑)。ただそれも、次第に自分の写真を俯瞰して見ることができて、作品として楽しめたので「自分が楽しめるなら間違いない」と実感できました。今見返しても、すごく楽しめる美しい写真集になったなとホッとしています。写真集なのでインタビューページ以外、文字はありませんが、写真から伝わる物語がこの写真集にはあると思います。写真から一緒に旅をしているようなビジョンが浮かぶと思うので、そこもぜひ楽しんでいただきたいです。
(談)
<宮沢氷魚と読書>
僕が出演させていただいた映画『エゴイスト』(現在公開中)の原作小説を読み直しています。撮影にインする前と、撮影を終えて完成品を観て、自分の中でどう感じ方が変わったかを楽しんでいるところです。一度自分がその世界を生きているので、読んでいて、まるで自伝というか、自分の人生を読んでいる気がしておもしろいですね。
子どものころからミステリが好きで、よくアガサ・クリスティ作品を読んでいました。今は、ミステリにかぎらず人にすすめられた本を読んでいます。ただ、お芝居の仕事に入っていると台本を読んだり常に文字に追われているので、あまり本を読まないようにしていて。終わったタイミングや心に余裕がある時に、楽しんでいます。アウトプットを求められる仕事なので、本を読んだり映画を観たり、人に会ったりして、吸収できるものはしていきたいと思っています。
<宮沢氷魚’s Favorite Photos>
京都編①
喫茶店で撮影した一枚。光の感じも青いシャツのシルエットも好きです。この写真のように喫茶店でコーヒーを飲みながら自然光で本を読む、というのが僕の理想的な休日なのですが、実際はなかなかできていません(笑)。
京都編②
僕はあまり着物が似合う体形ではないので着る機会が少ないのですが、この着物のカラーとシチュエーションがすごくハマっているし、京都ならではの雰囲気になっていてすごく好きです。
沖縄編①
撮影中に雨が降ってきてしまい、駐車場に停めたロケバスで待機する時間があったんです。その時にカメラマンの尾身さんが、「ここで撮ろう」とひらめいて撮影することに。予定になかった一枚がすごく美しくて、掲載することになりました。
沖縄編②
ジェームズ・ディーンをイメージした写真。たまたまアメリカっぽい場所があって、たまたまそこに到着したのが夕日の時間帯で……と、奇跡的にすべての好条件が揃って撮れた写真だなと思います。
©宮沢氷魚 ファースト写真集『 Next Journey』/集英社 撮影/尾身沙紀(io)