怒られるのが自分1人のほうが過激なものを出せる(佐久間)
――とんでもない才能っていうのは出てきた瞬間にわかるものなんですか?
林 芸人さんは難しそうですよね。
佐久間 こっちは面白いと思っても、世間の反応は全然だったということはありますからね。それこそランジャタイとか、5年前ぐらいに番組に出てもらって、僕はめちゃくちゃ面白かったけど、全然ウケなかった。それはたぶん僕のアプローチの仕方が間違っていたんですよ。彼らを天才として出しちゃったからみんな身構えちゃったんだけど、本当はもっとアナーキストとして出すべきだった。最初の見せ方、リボンの掛け方が間違えていたんですよね。
マヂカルラブリーがランジャタイと一緒に絡んだときがあって、マヂカルラブリーはランジャタイのことをクソ何もできないやつらとしてプレゼンしたんですよ。やじったりして。でも、やじっても心折れずに勝手なことやる。その構図がめちゃくちゃ面白くて。だから、マヂカルラブリーのランジャタイのプレゼンが正しかったんだろうなと思います。
今はもうランジャタイは何をやっても大丈夫ですけど、若い才能と接するときは「これが世の中に対しての正しいプレゼンテーションなのだろうか」「才能を潰してないだろうか」みたいなことは常に考えますね。
――藤本先生はデビュー当時からとんでもない才能だなっていう感じだったんですか?
林 若い頃は大量のボツを重ねていました。読み切りの6作目とか7作目くらいまでは、もう本当に毎週毎週ずっとボツみたいな時期があって。本人もめげずにずっと送り続けてくるので、すごいなと思いながらも、「毎週送ってこなくていいから、ちょっと考えようか」と言うこともありました。そういう新人さんはいるんですよね。やる気があり過ぎるというか。
佐久間 初期短編集が出ているから、当時の荒々しさもわかるんですけど、おそらく世の中にはまらないかもしれない過激な部分はもっとあったと思うんです。それを作品として出せるようにするまで、どうアプローチしていったんですか?
林 作品ごとの議論になるんですけど、すごくシンプルにいうと、露悪的なものがメインディッシュなのはNGですよとか、物語上必要だったら描いていいですとか、そういう境界ラインは議論できるので、そのやり取りはしました。本人も、映画だったら、アニメだったらどのへんまで描いているかというのを把握しているので、そのラインを自分なりに見定めている感じでした。
さすがに「これはまずいですよね」というのは全部お伝えして、それでも本人もわかって確信犯的にやっているときもあるので、「やっぱりそうですか」といって直すこともあれば、「いや、これは直したくないです」という場合もあって、そういうときは編集部内で「載せられますかね」みたいな相談をします。
佐久間 僕も『ゴッドタン』で途中からプロデューサーを兼任したのは、怒られるのが自分1人のほうが過激なものを出せるからなんですよ。最初はプロデューサーが別にいたんですけど、そうするとその人たちが怒られちゃうから。
林 かわいそうですよね。
佐久間 かわいそうだったので、僕が全部やるようにしたんです。でも、自分がやるようになったことで、これはたぶん視聴率を取らないから怒られるだろうけど、あとでDVDでめちゃくちゃ売って鼻を明かしてやろうとか、そういうこともできるようになったから、よかったですけどね。
つづく
Photos:Teppei Hoshida
Interview & Text:Masayuki Sawada