面白いと感じる瞬間はバラバラ(林)

佐久間 「わっ、これはすごいくるかも!」と思う瞬間というのは、やっぱり作品ごとに違うんですか?

 違うと思います。プロットでわかる面白さと、ネームじゃなきゃわからない面白さがやっぱりあって。例えば『よつばと!』みたいな漫画って、たぶんプロットの段階じゃ面白いかどうかわからない気がします。よつばちゃんのかわいさって動かさないとわからない。でも、『進撃の巨人』はたぶんプロットで読んでも面白いような気がするんですよね。だから企画とか作家の特性によって面白いと感じる瞬間はバラバラかなと。

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©︎KIYOHIKO AZUMA/YOTUBA SUTAZIO
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『進撃の巨人』全34巻
©︎諌山創/講談社

佐久間 『チェンソーマン』はどうだったんですか?

林 『チェンソーマン』はたぶんプロットで読んでも面白いし、演出が加わってさらに面白いという印象はありました。本当に作家さんによって進め方が違うので、関わり方も変わってくるんですよ。

藤本さんの場合は、打ち合わせで固めるところと、あえて自分からは何も言わないところがあって。ネームで読んだときに生で感じてほしいところは僕に言わないで、ネームにして見せてくる。でも、物語の構造で悩んだときはご相談いただくので、「僕としてはこういうことを期待します」とか「こういうふうになったら面白いと思います」と言うようにしています。

『SPY×FAMILYの遠藤(達哉)さんは、プロットから密に何度も何度も打ち合わせをするタイプです。お互いに矛盾点をずっと探すんですよ。キャラクターが知っている/知らないとか、心が読める/読めないとか。
「こうなったらもうアウトじゃん」というパズルゲームみたいなところもあるので、そこはかなり綿密にやっています。それでもいざ描き始めたら、「えっ、これじゃダメじゃん」というのが見えてくるんですよね。だから結局、毎回締め切りに追われながら、大事な打合せを重ね続けています。

佐久間宣行(テレビプロデューサー)×林士平(『少年ジャンプ+』編集者) 【仕事術からエンタメの未来まで】炎の20,000字対談! 2_4
『SPY×FAMILY』1~10巻発売中
©︎遠藤達哉/集英社

佐久間 『SPY×FAMILY』の遠藤先生は、ロジックの部分をけっこうしっかりつくってからじゃないと描けないタイプなんですね。

 すごい密に打ち合わせしながら、創っていただいてます。

佐久間 芸人さんの中には、絶対に自分の意見でしかやらない人もいるんですよ。こっちがアイデアを出し続けていると結果的に追い込んで退路を断っちゃうから、あえて、つまらないアイデアだけ出すという会議があるんですね。

 ハハハ、なるほど(笑)。

佐久間 間が持たないからアイデアを出すんだけど、仮に自分のとっておきのアイデアを出したとしても、それは絶対やろうとしない。例えば劇団ひとりとかがそうで、自分で生み出したものしかやらない。だから、彼が何か思いつくまでつまらないアイデアを出すしかないという(笑)。

 それでいうと、意図的に「壊す」打ち合わせはするかもしれないですね。ムダにあり得ないプロットをお伝えして、「それ、ありなんですか?」と聞かれたら、「なしだと思うんですけどね」と言いながら、一応お伝えするだけはすることはあります。