〈神戸・6歳男児遺棄・再逮捕〉「逃げる飼い犬を笑いながら棒で叩いていた」「よその家に投石」一家を“支配”していた次男・大地容疑者(32)の蛮行。監禁された母の第一発見者の重大証言とは
神戸市西区の草むらで穂坂修君(6)が遺体で見つかった事件で、7月13日兵庫県警は叔父の大地容疑者(32)、母親の沙喜(34)、叔母の朝美(30)、朝華(30)らきょうだい4人を死体遺棄容疑で再逮捕した。4人は穂坂修君の祖母(57)に対する監禁や傷害の疑いで先月逮捕されていた。
再逮捕容疑は6月19日に穂坂修君(6)の遺体を銀色のスーツケースにいれて、自宅から約1キロのところにある草むらに遺棄した疑い。この事件は神戸市西区のアパートで暮らしていた家族6人の中で起こっており、きょうだい4人に監禁されていた祖母が逃げ出したことから発覚した。兵庫県警は修君が死亡に至った過程と遺棄した経緯について慎重に調べを進めている。
社会部記者が語る。
「修君の祖母は、大地容疑者が『修君の遺体をスーツケースに入れて隠すように3姉妹に指示をしていた』と供述しています。また、修君の遺体は背中を中心に打撲によるあざが多数あったことが司法解剖によってわかっています。大地容疑者が家族を支配する形で犯行が行われた可能性が高いと県警は見ています」
事件の取材を進めるうちに4人きょうだいがかつてすごした複雑な家庭環境や虐待の連鎖の詳細なども浮き彫りになっていった。改めて詳報する。
主犯は次男の大地容疑者か
母親はシングルマザーで、逮捕された4人に長男を加えた5人の子供とともに、神戸市垂水区の公営団地で長年暮らしていた。西区のアパートに転居してきたのは沙喜容疑者がお腹に修くんを宿していたころのようだ。当時は母親と3姉妹だけが入居し、後に修くんが産まれ、大地容疑者が同居するようになったのは昨年からとみられる。
社会部記者が語る。
「逮捕された4人のうち主犯格は大地容疑者で、彼が昨年末に同居するようになってから修くんは保育園を休みがちになり、きょうだいを支配したとみられている。双子については警察がマスコミに写真や映像を撮らせないように配慮していることからも、関与の度合いも低いとみられます」

移送される際の大地容疑者(写真/共同通信社)
保護された母親は普段から車いすで、移動もひとりでは困難なことから脱出時には協力者がいた可能性がある。
「複数の被疑者が知的障害者向けの療育手帳を持っていましたが、警察が実名発表に踏み切った以上、責任能力はじゅうぶんにあるとみています。沙喜容疑者は高校卒業後は携帯電話販売会社や保育園、夜の店でも働いていましたが、修くんを出産してからは無職でした。戸籍上では父親が確認できませんが、相手は水商売時代に出会った男性といわれている、県警も所在確認に苦労しています」
母親が沙喜容疑者ら子供たちの育児にあまり熱心でなかった様子は♯1で報じたが、取材を進めるうちに穂坂一家が周囲から浮いていた存在だったこともわかってきた。
垂水区の団地の住人はこう語る。
「長男も次男の大地くんも粗暴で、投石や女の子に殴る蹴るなどの暴力を振るうだけでなく、飼っていた雑種犬を木の棒で叩いたりしていましたよ。キャンキャン鳴いて必死で逃げる犬を、ヘラヘラ笑いながら兄弟で叩いてたんです。まだ2人とも小学校高学年くらいでしたけど、その残虐性には大人の私でも引いてしまいました。母親から虐待を受けていることも有名でしたから、問題児だけど可哀想な子たちって印象でした」

かつて一家が住んでいた集合住宅(撮影/集英社オンライン)
沙喜容疑者の同級生の父親も、今回の事件については思うところがあるようだった。
「正直な、あの子ら悪いことしてるってわからんかったと違うかな。小さなころからあの5人きょうだいは知っとるけどな、特に大地はちょっと度が超えてるとこがあった。人んちに向かって石投げとったりもして、俺も怒ったことあるんだけど、悪いことしてるってわかっとらん反応だったんや」
一番下の双子だけは特別扱いしとったように見えた
大地容疑者が小学生時代、女の子に大けがを負わせた「事件」もあったという。
「大地が足を引っかけて女の子が転んで、牛乳瓶が割れて女の子の腕に刺さって大けがしたんや。その子は腕が動かなくなるかもしらんくらいの大ごとで警察沙汰にもなって、お父さんが穂坂家に怒鳴り込んだんやけど、あそこのお母さんは謝りもせず追い返したんや。そもそもあのお母さんはしょっちゅう子供を怒鳴り倒して、それもヤクザが怒鳴ってるんかいうくらいの剣幕で罵声を浴びせとったんや。あんな言われ方されたら子供じゃなくて大人でもおかしくなるわ。
大地が小学生くらいのころはきょうだい5人でよく遊んどったわ。鬼ごっこしたりかくれんぼしたり、どこもおかしくない子供らしい子供やった。上の子はわからんが4人とも特別支援学級に行ったとは聞いてるが、あのお母さんにいろいろやられておかしくなったとしか思えんわ」

幼少期の大地容疑者(知人提供)
大地容疑者の同級生の母親は、沙喜容疑者が幼いころから一家の母親役を担ってきたことに思いをはせた。
「お母さんはシングルマザーでたぶん仕事もされていなかったと思います。大地くんを含めてほかのきょうだいは挨拶もしないんだけど、沙喜ちゃんとはよく話しました。ここに越してきた当初、お母さんはよく夜に出かけていて、沙喜ちゃんがきょうだいの夜ごはんを作っていると聞きました。まだ沙喜ちゃんも小さかったので、ガスを使うのは危ないと思って『火だけは気をつけなね』というと『大丈夫』と返事をしてくれました」
穂坂家では猫やウサギも飼っていたという。
「外でウサギを遊ばせているのを見たこともあります。そういった動物を飼っているので、部屋の中からケモノ臭が漏れ出ていました。沙喜ちゃんや男の子たちに比べ、双子たちだけはいつも綺麗な格好で、髪もきちんと結んでいました。学園都市の方で買い物しているお母さんをよく見かけましたが、連れているのはいつも双子だけでしたから、特別可愛がっていたのかもしれません。
とにかくあまり進んで関わりたいとは思えない家庭でした。なんらかのトラブルがあったみたいで団地内でも違う棟に引越しされて、その後はよくわからなくなりました」
違う棟に引っ越したのは「追い出された」という話もある。前出の沙喜容疑者の同級生の父親はこう振り返った。

中学時代の沙喜容疑者
「3階の窓から生ゴミを放り投げとったから、地面に落ちて散らばった生ゴミに虫がたかってえらいことになってそれで追い出されたって話もあったしな。まあそんな環境やから子どもたちがおかしくもなっても仕方ないわな。あと、一番下の双子だけは特別扱いしとったように見えたな。お母さんのとこに男が出入りしとった時期があったんやけどな、その男がくると双子だけを連れて飯食い行っとったみたいや」
「警察に連絡して保護してもらいました」
周囲の人たちはおしなべて穂坂家の母親は、子育てには向いていないと感じていたようだ。そして6月20日の深夜、母親はかつて暮らした垂水区の公団の近くで車いすでたたずんでいるところを「保護」されることになる。
第一発見者の60代男性が語る。
「その日は買い物に出かけてバスで帰ったのですが、バス停で降りて徒歩で帰宅中、路上に車いすに乗った女性がひとりでいることに気づきました。午後11時は過ぎていました。福祉センターやUR住宅が近くにありますが、街灯もわずかしかなくて暗いし、この時間にひとりで車いすでいるなんて普通には見えませんでした」
この第一発見者の男性によると、女性は白髪で70代くらいにしか見えなかったというが、後に報道で「57歳」と知って仰天したという。

母親が保護された現場(撮影/集英社オンライン)
「女性はつば広の帽子をかぶって半袖、膝丈くらいのスカートをはいていました。車いすの周りには青色のノート、ペット用のケージ、ペットボトルを入れるための布みたいのが散らばっていました。『こんなところにおったら危ないよ』と声をかけると、最初は反応が薄かったものの、何度か声をかけるうちに『大丈夫よ、家近いから』『昔あの辺に住んでいた』と言い出したんです」
近づいて目をこらすと、女性の目のまわりに殴られたような茶色い跡があった。
「家で暴力を振るわれたりしてるんかなって思いました。ほかに目立った外傷はありませんでしたが、女性は車いすから立ち上がろうとして、そのまま2、3歩踏み出すと膝から崩れ落ちて倒れてしまったんです。私が車いすを押して近づくと、女性は自分で座り直しました。散らばっていた物も拾おうかと申し出たのですが、『大丈夫』と自分で拾って膝の上に乗せていました。いずれにせよ放っておくわけにはいかないので、警察に連絡して保護してもらいました」
第一発見者によれば、女性は憔悴した様子ではあったものの、監禁された状態から命からがら逃げ出してきた、という雰囲気は感じられなかったという。
調べに対し3姉妹はおおむね認める趣旨の供述をしているようだが、家族の主導的立場にいたと思われる大地容疑者は容疑を否認しているという。1日も早い全容解明が待たれる。

警察に通報した男性のスマートフォン(撮影/集英社オンライン)
※「集英社オンライン」では、今回の事件について取材をしており、情報を募集しています。下記のメールアドレスかTwitterまで情報をお寄せ下さい。
メールアドレス:
shueisha.online.news@gmail.com
Twitter
@shuon_news
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班
#1 逮捕された母親やきょうだいたちも監禁した祖母から“虐待”を受けた過去…「頭にネット包帯を被っていた」「ウチではあの子たちを三度保護しました」…修くん(6)はベランダにだされて「助けて」と
#2「1週間同じ服で男子からクサイとイジメられていた」かつて虐待とネグレクトを受けた母(34)はなぜ我が子を“虐待”したのか。「弟が同居してから家の雰囲気が変わった」と近隣の証言。一家の奇妙な日常とは
#3〈神戸・6歳男児遺棄〉「逃げる飼い犬を笑いながら棒で叩いていた」「よその家に投石」一家を“支配”していた次男・大地容疑者(32)の蛮行「クラスの女子に大けがをさせても謝罪せず」逃げた母の第一発見者の重大証言とは
#4〈神戸・6歳男児遺棄〉「ホスト遊びにハマってキャバクラで働くようになった」「彼氏を奪われた」高校で“一軍女子”だった沙喜容疑者(34)の光と影。タカラれた同級生の母親がそれでも“同情”する理由とは…
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