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閉山後、限界集落の危機に瀕した石見銀山。町を救ったのは集落出身で、1970年代から80年代に相次いでUターン、起業した二人の青年だった。

一人は義肢装具メーカーの中村ブレイスを興した中村俊郎さん。
もう一人が自社ブランドの衣料品などを手掛ける石見銀山生活文化研究所(石見銀山群言堂グループ、以下群言堂)の松場大吉さんだ。

この二つの企業はまた、事業を成長させるだけでなく、古い建物を修復して利用し、町並みを残しながらの地域再生にも地道な取り組みを続けてきた。江戸時代の武家屋敷や、明治、大正期の商家、町家などの歴史的な建築物を多く残す大森地区は、1987年に重要伝統的建造物群保存地区に登録されている。

限界集落の危機に瀕した町を蘇らせ、ベビーラッシュへ。石見銀山の町を救った2つの企業に問う、移住者とともに歩む未来_1
中村ブレイスによる65棟目の古民家再生となる、旧商家「松原家住宅」(江戸後期の建築とみられる)。島根県立大学とのコラボレーションで、カフェや仕事場、書庫を併設した複合型図書館に生まれ変わる(2023年春頃オープン予定)
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また、2007年には世界遺産にも登録され、多くの観光客が訪れるとともに、独特の景観を残す集落に、若者がUターン、Iターンで移住するようになった。

地元の二社が数十年という歳月をかけて事業を成長させ、雇用を生み出し、町を再生させてきたことが、移住者の増加に結び付いたのだ。