新しい年が明けてがんばろうと思っても倦怠感をおぼえたり、モチベーションが上がらなかったり、気分が落ち込んだりするのは「正月うつ」の症状といえます。
年末年始の休暇はいつもより長めのお休みになるので、どうしても生活リズムが乱れがちに。「五月病」と比べて、この時期特有の寒い気候や行事の多さがさらに、症状を出やすくさせています。
もともと冬は日照時間が短いため、気分が鬱々としやすく、気温の低さもあり、体はストレスを感じやすくなります。そのため気分の落ち込みやげだるさを感じる人は多いです。
また、お正月の行事で暴飲暴食が続く、夜更しして昼夜逆転する、日中ダラダラと過ごす、などしてしまいがちです。こうしたことで体内リズムが乱れるので、睡眠が浅くなり、体をしっかり休めることができなくなり、休んでいたはずなのに疲れが残ってしまいます。
逆にせっかくの休みだからと、予定をいっぱいに詰め込んで体が疲れてしまうことがあります。
特に12月の年末まで忙しく働いていた人は要注意。
年末の疲れが取れないまま、休み中も予定をこなすために、がんばってしまうので、疲れが溜まりやすくなり、けださるさが残ることがあるのです。
体のだるさに加えて、気持ちが落ち込みがちになる場合もあります。
例えばクリスマスは多くの人にとって楽しい行事ですが、人によってはそれがストレス環境になることも。
家族で楽しめる人もいれば、家族のことを面倒に感じる人もいますし、1人暮らしが気楽と思う人いれば、寂しいと感じる人もいます。
年末年始は年間でも大きな行事やイベントが続くので街も華やかですが、そういったことにストレスを感じやすくなったり、孤独感が増したりする時期でもあります。
また、仕事を抱えすぎてサポートをお願いできない、内向的であまり仕事のことを周りに共有できない人は年末年始の休みが引き金となり、正月うつになってしまうことがあります。
正月うつは、休み中の生活リズムの乱れによる睡眠不足とストレスを感じやすい環境が原因なのです。
「新年なのにやる気が出ない」「正月明けに会社に行きたくない」…年明けに気を付けたい「正月うつ」の原因と対策
仕事始めを迎えるのに「体にだるさが残っている」「やる気が出ない」「新年が明けても新たな気持ちにはならない」…これは「正月うつ」の症状であることも。正月うつの原因と対策についてメディカル スイッチ イン クリニックの院長、森田由佳医師にうかがった。
正月は睡眠不足とストレスを感じやすい環境になりがち

休み明け前から生活リズムを整える
正月うつの解消法はまず、休み明けの数日前から、生活リズムを整えるようにすることです。年末と元旦くらいは昼夜逆転生活でもいいのですが、2日からは徐々にいつもの生活リズムに戻しましょう。
働き盛りの中高年世代は若い世代に比べて、生活リズムを戻すのに時間がかかるので、仕事始めから逆算して早めに始めてください。
朝は朝日をしっかり浴びて、自然な睡眠へと誘うホルモンのメラトニンの分泌を促し、決まった時間に眠るようにしましょう。
良質な睡眠をとることができれば、体の疲れやだるさは解消していきます。
また、胃腸を休めるようにしてください。お正月はどうしてもお酒を飲む機会が多く、おせち料理、お餅などで糖質を摂りすぎてしまいがちです。
糖質を摂りすぎる食事は、血糖値の乱高下を招き、けだるさや眠気の原因になります。
仕事始めの2日前くらいから、食事には気をつけて過ごすようにしましょう。

年末年始のお休みは、「ダラダラしていました」という人が多いのですが、その場合いざ仕事が始まるとなったとき、オンとオフの切り替えがうまくいかずに正月うつになってしまうことも。
できれば、遊ぶときは思いきり遊ぶなど休み中の生活でメリハリをつけることができると、気持ちの切り替えがしやすく、憂鬱な気持ちも解消されていきます。
また、正月うつに限らず、軽い運動やストレッチをする、お風呂にゆっくり浸かる、などは体をリラックスさせるのに有効なので、ぜひ積極的にやってみてください。
うつ状態が続く場合はクリニックを受診
解消法をやってみても、体がつらい、気分が落ち込む場合は専門医のカウンセリングを受けるのもひとつの手段です。
特に睡眠がしっかり取れていない場合は、早めにクリニックを受診してください。
一時的でも何らかの薬の処方によって生活習慣を整えていけば、うつが悪化することは少なくなります。
クリニックに行くことに躊躇される方は、市販の睡眠改善薬を一時的に使って、生活リズムを改善しましょう。
ただし、それでも眠れない場合はクリニックで専門医に相談するようにしてください。
また、できれば人とコミュニケーションをしっかり取りましょう。
うつっぽいときに、コミュニケーションを取るのはストレスに感じる人は多いと思いますが、やはり人と話すことで、気分転換にもなります。自分が考えていたこととは違う視点でのアドバイスがもらえたりするので、無理のない範囲で人と話す機会を作るようにしましょう。
休み明けは誰でも気分は多少落ち込むものです。長期お休みの後はなおさらです。
まずは生活リズムを元に戻すようにし、休みの間にオンオフの切り替えをしてメリハリのある過ごし方をしましょう。
取材/百田なつき
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