ボディビルの最高峰大会とされる「オールジャパンフィットネスチャンピオンシップ」(日本ボディビル・フィットネス連盟主催)のミスフィットネス部で、丹羽裕子さん(68歳・京都市在住)が見事優勝を飾ったのは9月19日のこと。
決勝進出者は5人ながら、いずれも地方ブロック大会を勝ち上がってきた強豪ぞろい。最年少選手(24歳)との年の差はじつに44歳だ。
奇跡の68歳女性がボディビル日本王者に! “50歳の壁”とシワを乗り越える「スゴい呼吸法」
9月に行なわれたボディビルの最高峰大会「オールジャパンフィットネスチャンピオンシップ」のミスフィットネス部。並みいる若手をおしのけて優勝したのは、なんと68歳の丹羽裕子さん。42歳からボディビルを始めたという彼女がおこなっている、筋肉を若く保つ秘訣とは。
「68歳のわたしがここにいてええんかな?」

68歳にして初優勝を飾った丹羽裕子さん(中央)
42歳からボディビルを始め、全国大会出場歴は20回を超える。しかし、これまでの成績は2位が最高で、どうしても優勝には手が届かなった。今大会も年齢のハンディを考えれば、最下位もありえると覚悟していたという丹羽さん。それがふたを開けると、優勝だというのだからたいしたものだ。
しかも、オールジャパン優勝後の10月18日には日本代表として、ソウルで開かれた世界大会に出場。ここでも競技者8人中、断トツの高齢ながら(残りの7人は10代3人、20代4人)、圧巻のパフォーマンスを披露して注目を集めることに。
丹羽さんは笑う。

世界大会での丹羽さん(左から2番目)
「ステージ上で8人一緒に並んだ時は、さすがに『68歳のわたしがここにいてええんかな?』と考えこんでしまいました。結果は本選通過ラインの6位以内に入ることができませんでしたが、最高に楽しかったです!」

世界大会のエントリー表。上から2番目が丹羽さん
加齢で年々、筋肉の質は衰えてゆくため、ふつうなら、現役を引退してもおかしくない。にもかかわらず古希目前で日本一、さらには世界大会で戦えるほどの美しい体を維持できる秘訣はどこにあるのか? さっそく京都へ飛び、丹羽さんに聞いてみた。
――ミスフィットネス部門は単に筋肉美を競うだけでなく、開脚や側転などを交えた90秒のパフォーマンスも要求される過酷な戦いです。20代の出場者もいる中で、どうして68歳の丹羽さんが優勝できたのでしょう?
「シワ伸ばし、たるみ隠しのテクニックが上達したことが優勝の要因かな。シワやたるみを目立たなくさせれば、若々しく見えますから。とはいえ、体を膨らませ、笑顔で頬のたるみをアップさせ続けるのはけっこう大変。油断すると、すぐに頬が垂れ下がって年がわかってしまいますので(笑)」
ボディビルに「50歳の壁」

見よ、この筋力と柔軟性!
シワ伸ばしにたるみ隠し⁉ 68歳という高齢を逆手に、さっそく記者を笑かしにかかってくるあたりは、さすが関西人……と感心していたら、どうもそうではなかったみたい。
「優勝の秘訣はシワ伸ばし」と語るその表情は真剣そのもので、これこそが年齢を乗り越えて優勝できた一番の理由だという。
――シワのばしのテクニックと年齢克服の関係について、詳しく教えてください。
「ボディビルは50歳を過ぎると、いくらトレーニングしても、効果が出にくくなります。わたしもその『50歳の壁』にぶち当たり、スランプになりました。そんな時、『ピラティス』と巡りあったんです」
「ピラティス」とは第一世界大戦時に、負傷した兵士のリハビリのために開発されたエクサイズ+呼吸法で、体の深層部にあるインナーマッスルを強化し、体全体のバランスを整えることで、しなやかな健康体を取り戻せるとされている。
丹羽さんが続ける。
「ピラティスを活用すると、負傷した兵士はベッドに寝たままで体の機能を回復させることができるんです。このピラティスにインスピレーションを得て、若い頃のように健康で美しい体を取り戻す呼吸法を開発したんです」
丹羽さんによれば、老化とは体の中が縮んでインナーマッスルが衰えてゆくことだという。
「だから、若いボディを保つには逆に体の中を拡げ、インナーマッスルを育てればよい。
そのためには骨と骨の間を拡げ、そこに血液をたっぷりと送り込む。そうすることで、体を若いころのようにシワのない、柔軟で膨らんだ状態にできるんです」
――血流をよくする具体的な方法を教えてください。
「あれこれと試行錯誤をするうちに、血液の流れがよい状態とは、ふわ~と息を吸って体の中が拡がった状態だという感覚が少しずつつかめてきたんです。具体的には背伸びしながらあくびをし、大きく息を吸い込む。基本はこれだけでOKです。つまり、『背伸びあくび呼吸法』。
この呼吸法で目いっぱい空気を吸い、血流をよくして骨と骨の間に新鮮な酸素を送り込むことで、体は若いころのようにしなやかな状態に変わってゆきます」

背伸びあくび呼吸法を実演してくれた丹羽さん
「背伸びあくび呼吸法」とは
丹羽さんはこの「背伸びあくび呼吸法」を取り入れたオリジナルのエクサイズ教室を京都市内の文化センターなどで開き、受講者から好評を得ているのだとか。
「10代、20代の肌はたとえて言うなら、ゴム風船。表面はつるつるです。一方、私のような50代、60代の肌は紙風船。表面はシワシワです。ただ、『背伸びあくび呼吸法』で目いっぱい体を膨らませると、シワも目立たなくなりますよ(笑)」
最後に丹羽さんに今後の抱負を聞いてみた。
「この『背伸びあくび呼吸法』を取り入れたエクサイズをもっと広め、年齢に負けない若い体をたくさんの人に取り戻してほしい。それが当面の目標かな。
大会2連覇への夢? 体の状態をよくしようと常に努力していますが、さすがに来年は69歳ですからね。でも、ディフェンディングチャンピオンとして恥ずかしくない状態で出場できるなら……」
69歳でのV2なるか? いまやアラウンド古希の星となった丹羽さんの挑戦はまだまだ続きそうだ。

取材・文/集英社オンライン編集部
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