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子どもへの性的虐待

子どもが性暴力被害に遭うこと、つまり性的虐待に遭うことがあります。子どもは安全なところで、経験を積み重ねながら、身体を成長させ、世界を知り、人と関わる力が育まれていきます。性的虐待は、子どもの成長を阻害し、生活のスキルの発達を歪めます。また、自己の身体に対する侵害は、加害者によって身体を支配されているという状態です。

子ども、特に幼児、児童期の子への性的虐待は多くの人が怒りや絶望を感じるテーマでしょう。性的虐待、身体的虐待は子どものPTSDを生じさせやすいと考えられています。

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子どもの発達への影響

子どもが性的な行為の意味を受け取りにくいことは容易に想像できると思いますが、このことを発達過程に照らしながら、就学前の子どもについて考えてみましょう。

子どもの発達を身体、認知、言語の三つから見たときに共通しているのは、世界を知っていく過程が徐々に広くなっていく点にあります。まどろみを繰り返す乳児から徐々に起きている時間が延び、日中の活動時間が増えていきます。

まだまださまざまな刺激に対して慣れていない子どもは、乳児の頃は目もよく見えていませんし、自分の身体もうまく動かせず、養育者の絶対的な保護の中で成長していきます。

3ヵ月頃には首がすわり、7ヵ月頃にはハイハイをするようになります。このように身体の発育が進むと、ベッドの上か養育者の懐から見ていた景色はどんどん広がり、新たな世界が広がっていきます。1歳頃には単語を話せるようになってきますが、それまでにさまざまな言葉を聞いて蓄えたものを、表出していきます。

身体の発育が進み、少しずつ新しい世界の刺激に慣れていき、それが何であるのか、子どもなりに意味を理解しながら成長していくため、その成長に合わない刺激というのは強すぎて受け取ることができません。その過剰な刺激の一つが性的刺激です。児童期に虐待を受けた人への支援や治療を行っているクロアトルらによれば、虐待は「身体を一貫したまとまりのあるものとして経験することを妨げる。

その理由の一つは、性的、身体的虐待の最中に生じる強い過覚醒が、荒々しい、コントロール不能な、混乱したさまざまな感覚をもたらし、子どもの未発達な身体を圧倒するためである」と説明されています。成長途中である心身共に未発達な子どもたちにとって、虐待は全体的な発達を阻害することにつながります。

性的出来事とは非常に抽象的な事柄です。性ということが何かを理解する以前に、幼い子どもはまだ自分の身体をうまく動かせませんし、身体の名前とその部分を一致させられるようになるのも3歳以降です。3歳頃に使える言葉は、平均的にまだ700語ほどです。

そしてそれらは日常生活でよく使われる、例えば食事のときに使う物の名前、動物の名前、美味しいといった形容詞などが主たるものです。このような時期にペニスとはどのような意味を持っているでしょうか?