元ANAのCAの「絶対に後悔しない会話のルール」…あなたの先入観による失敗を消す言葉、威圧的な人の態度に油を注ぐ危険な言葉とは
先入観や思い込みによる一言は、ときに会話を盛り上げたり、関係性を深めるきっかけとなるが、間違えた解釈のままだと違和感やしこりだけを残してしまう場合もある。そんなコミュニケーションにおける人間関係のストレスを軽減する方法を紹介しよう。『絶対に後悔しない会話のルール』 (集英社新書) より、一部抜粋、再構成してお届けする。
『絶対に後悔しない会話のルール』#1
自分自身が持つ先入観を知る
日頃の人付き合いのみならず、人生を左右するような重要な試験や面接、プレゼンテーションの場面において、私たちの先入観が脅威となる場合があります。
本来であれば「うまくできる」ことなのに、気づかないうちに、先入観が、それを妨害してしまうこともありえるとすれば、なんとも悔しいですし、恐ろしいことでもあります。
逆に、自分自身が持つさまざまな先入観について知っていれば、失敗や後悔を減らすことにつながります。
ステレオタイプやバイアスにも利点はあります。それらがあることにより、私たちは認知の処理のために使うエネルギーを減らすことができ、なおかつ最速で考えて行動できる、いわば効率化のための機能なのです。
たとえば、あなたがスーパーに勤務していたら「店内でソワソワしている人は万引きの可能性がある」といった先入観によって、防犯対策を強化できるかもしれません。
あるいは、就職面接前に「私ならきっとできる!」という思い込みがあれば、少しはポジティブな気分で、自分の伝えたいことを面接の場でアピールできます。
困るのはそれが逆に働くときです。「ソワソワしているお客様がいるけれど、子連れの人だから、万引きなんて、するわけがない」と、「親だから」「子どもと一緒だから」などという理由で、悪いことをするはずがない、という先入観があれば、防犯の妨げになることもあります。
また、自分に対しての「私は一流大学出身ではないから、企業に採用されるのは無理だ」などという思い込みは、自らの選択肢や可能性を制限し、根拠のないネガティブな結果に想像力を占拠されてしまうでしょう。
それによって、諦めや絶望といった枠の中だけで、重要な決断をくだすこととなり、それが自信のない態度にも出てしまい、自らチャンスを退け、大きな損失になりかねません。

「先入観」をなくす言葉
こうしたことからもわかるように、私たちの思い込みは、物事の結果を大きく変える影響力があります。
しかしその影響を受けて、最終的に物事の判断を調整できるのは、ほかでもない自分自身の意思です。
偏った考え方や、常識や一般論といわれる尺度に判断を惑わされそうなときは、ほんの1秒ほどの時間で「いや待てよ」と、自分に問いかけてみましょう。
それだけのワンアクションでも、思い込みによる安易な即決をとどまらせ、より理論的で、柔軟な考え方ができる自分へと、スイッチを切り替えることが可能です。
まずは、あなたにとって、身近なステレオタイプやバイアスがあるかどうか、観察してみましょう。「外国人は皆、自己主張が強くて苦手」と思っているとすれば、「待てよ。日本人だっていろいろなタイプの人がいるじゃないか。だとすれば、自分と気の合う外国人だってきっといるはずだ」と自然に考えることができるのです。
もしも、「40歳を過ぎたら結婚は難しい」という先入観を持つ人がいるとすれば、その信ぴょう性を疑い、根拠を探し、「本当に難しいのか? いや待てよ」と自分に問いかけてみましょう。
そして、「結婚に年齢は関係ない」「人それぞれだ」「決めるのは自分だ」といった、あなたらしい考え方を、言葉として置き換えられれば、その時点で、すでに先入観による脅威は去ったようなものです。
「威圧的な人」とうまく付き合う方法とは
コミュニケーションのコンサルタントという仕事をしていると、「威圧的な人がいるのですが、どのように接したらいいでしょうか」というご質問を受けることが少なくありません。
まずは、それが学校や組織や職場などでの出来事でしたら、あなたに対するパワハラになっていないかを、慎重に確認することが先決です。
コミュニケーション上の対処法などについて考える前に、その威圧的な人があなたの心身を疲弊させ、実質的な症状が体調面に出ている場合には、すぐに専門家のサポートを受けていただきたいと願います。
ただ、そこまでではないけれど、イライラとしたり、毎回、嫌な気分になるという方には、「威圧的なものの言い方をする人」への対処法の一つを紹介いたします。
それは、威圧的な人の許し難い態度と本人が話している内容(情報)を、切り離して考えるという方法です。
というのも、威圧的な言い方をする人と話していると、そのネガティブな迫力に圧倒され、畏縮してしまいがちです(そもそも不快ですものね)。
そこで、相手の威圧的な態度(言い方、表情、粗雑で乱暴な所作など)でなく、相手が「こちらに伝えたい言語的な情報」に集中し、まずは相手が伝えようとしている情報をすくい上げ、理解してみましょう。

「威圧的な態度」の部分は、あなたにとって意味も価値もない
そうすることで、相手があなたに最も伝えたいことや、やってほしいことなどが具体的に見えてくるでしょう。その部分に焦点を絞って、その情報に沿って、淡々と頼まれたことや、仕事の業務を遂行してみるのです。
そうです、「威圧的な態度」の部分は、あなたにとって意味も価値もありません。
このように、相手のメッセージを受け止めるときに「威圧的な態度」と「こちらに伝えたい情報」とを切り離し、不用意に傷つかないよう、これら二つの情報を区別する箱を頭の中に用意するイメージです。
さらには、威圧的な態度の相手と付き合う場合には、可能な限り、必要なことだけのやり取りに徹してみるといいでしょう。
「必要なことだけ」でよいのですから、なんとしてでも会話を続かせて褒めちぎらねばとか、面白いネタで笑わせなくてはなどという、余計な思い込みは切り捨ててしまいます。
仕事のうえで、あなたがやるべきことだけはしっかりやり遂げるという姿勢を貫いていれば、最低限の信頼関係は保たれます。
そのうえで、先回りして気の利いた準備をしたり、提案ができれば、少なくとも「言ったことがまだできていないのか」といった文句や不満は、減らせる可能性があります。
また、威圧的な人の中には、自分が相手から威圧的だと思われていることに気づいていない場合もあります。
火に油をそそぐような言葉
おそらく「あなたの言い方は威圧的です!」と言っても、火に油を注ぐようなものですから「恐れ入りますが、一つだけ確認させてください」とか、「ご指示の内容は、○○と△△という2点のみという意味で承知しました」などと、相手に「答えだけくれればいい」というニュアンスのある、明瞭簡潔で理論的な訊き方を徹底してみるのも得策です。
もし、自分自身が威圧的になっていないか気になる方は、「お前」「あなた」といった代名詞を封印し、相手の名前を呼ぶことと同時に、「ありがとう」「助かります」などという言葉の使用頻度を高めてみましょう。
さらには、「そうなんですね」「なるほど」などと言うときには、普段より1〜2秒ほど、語尾を長くして、ややゆっくりで、ソフトな言い回しにチャレンジされるといいでしょう。

また、威圧的だという印象を持たれている人の中には、実は内面は懐の深い人物なのだけれど、言動が粗雑なために(この時点で本人には改善してほしいですが)、周囲の人たちを畏縮させてしまうとか、周囲の噂が先行しているだけで、会って話してみると本人は大して威圧的ではなかったなどということもあります。
ですから、もしあなたの職場で、「新しく配属される店長の○○さんは、威圧的で有名らしいよ」などと、誰かの噂を耳にしても、実際に、あなた自身が、その店長の○○さんと話してみるまでは、勝手な思い込みをして、極度な緊張状態に自分を追い込まないよう気をつけましょう。
威圧感のある人がいると、普段はできることなのに、緊張してケアレスミスを起こしてしまうなどということは、私にも経験があります。
しかし、相手を威圧的に感じることのほとんどは、自分の思い込みによって膨らんでしまったイメージであると自分に言い聞かせてみたところ、落ち着いて接することができました。
職場に威圧的な人がいても、滞りなく仕事ができるよう、淡々とやるべきことに集中することが、すでに「うまくやっている」ということになっているはずです。
ですから、「私はうまく対処できているから心配ない!」というポジティブな思い込みにすり替えながら、必要な情報を理解し、確実に実行できる人を目指していきましょう。
文/吉原 珠央 写真/shutterstock
「絶対に後悔しない会話のルール」
吉原 珠央 (著)

2023年9月15日発売
990円(税込)
新書判/200ページ
978-4-08-721281-5
【コミュニケーション能力は「観察」で変わる!】
「初めて会う相手と会話が盛り上がらない」「人と話すといつも同じような会話にしかならない」「会社の部下とうまくコミュニケーションが取れない」……コロナ禍が沈静化してきたことで対面のコミュニケーションの機会も多くなったが、会話がうまくいかず、様々な後悔や悩みを抱えている人も増えている。
しかし、「思い込み」「決めつけ」「観察」という3つのキーワードに気を付けるだけで、会話における後悔は格段に少なくなる。
数々のベストセラーを世に送り出してきた著者による、人生を楽しくする会話術の決定版!
【おもな内容】
◎話す前には2秒黙る
◎相手の「単語」に着目する
◎会話の流れは「徹子の部屋」に学べ!
◎「いや待てよ」を口癖にする
◎人の幸不幸を決めつけない
◎あなたの問題解決を阻むのは思い込み
◎相手の思い込みをポジティブに変える方法
◎観察力がある人は失言しない
◎威圧的な人とうまく付き合う方法
◎安心感を与える「言語化」
◎エレベーターの待ち方にセンスが出る
◎「テーブルのガタつき」をすぐ直せる人になる
【目次】
まえがき
第一章 「思い込み」がコミュニケーションを台無しにする
第二章 「心地好い会話」の裏には観察がある
第三章 人生を劇的に変える会話の仕方
あとがき
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