大幅な上方修正へと至った理由は、予想を裏切るほどの入園者(予約も含む)があったためだろう。オリエンタルランドは、2024年3月期の期首に通期の入園者数を2510万人の見通しとしていた。これは2023年3月期と比較しておよそ13.6%の増加である。しかし、その後これを2630万人に上方修正している。これは前期と比較すると2割も多い数字となる。
2023年10月の価格改定で1dayパスポートは初めて1万円を超えた。オリエンタルランドの経営陣は、値上げによって入園者数は抑制されると見込んでいたのではないか。しかし、ふたを開けると、予想を裏切るほどの人気ぶりだった。それほど、根強いファンを抱えているという証左でもある。
オリエンタルランドの2024年3月期通期の業績が予想通りに着地すると、コロナ禍の影響をまったく受けなかった2019年3月期の売上高、営業利益をそれぞれ1割以上も上回ることになる。

「客単価1万6000円超」入園料値上げも影響なし…ディズニーリゾートの人気が止まらない2つの要因
東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランドが、コロナ禍を乗り越えて快進撃を続けている。10月30日に発表された2024年3月期第2四半期連結決算では、営業利益を従来予想よりも2割多い1467億円に上方修正した。売上高も予想より1割程度の増収見込みで5946億円となり、このまま予想通りに着地すれば、いずれも過去最高を更新する。
値上げでも衰えなかった東京ディズニーリゾートの人気

オリエンタルランドの売上高と営業利益(※決算短信より筆者作成)
営業利益率は24.7%でコロナ前を0.1ポイント上回る予想だ。
サービス業はどこも人件費の高騰に悩まされている。それはオリエンタルランドも例外ではない。2024年3月期上半期では、人件費の増加が前年同期間と比較して64億円の利益下押し要因になっている。それにも関わらず、営業利益は2倍となっている。それほど値上げによる増収効果が高いということがうかがえる。
チケットによる収入は2019年の1.5倍
コロナ禍から回復したとはいえ、テーマパークへの入園者数は完全回復にはいまだ遠い状態だ。2023年4月1日から9月30日までの入園者数は1250万人だった。これは2019年の同期間の8割にも届いていない。

各期上半期(4月1日から9月30日)の入園者数の推移(※決算説明資料より 筆者作成)
しかし、入園客1人当たりの単価は急増した。2019年4月1日から9月30日までの1人当たりの平均単価は1万1504円。2023年同期間は1万6566円。約1.5倍も増加する結果となった。単価の内訳を見ると、チケット、商品販売、飲食販売のすべての項目で上昇している。なかでも単価の半分ほどを占めるチケットは、1.5倍となって値上がり率が最も高くなっている。

上半期1人当たりの売上高の内訳の推移(※決算説明資料より 筆者作成)
たとえば、1dayパスポートの料金は20年ほど前であれば、5000円台だった。実質賃金の上がらない日本において、チケットが1万円を超えるというのは割高に感じるかもしれない。しかし、オリエンタルランドには強気に値上げに踏み切ることができる理由があった。それは消費者意識の変化である外的要因と、東京ディズニーリゾートの内的要因の2つに見出すことができる。
東京ディズニーリゾート人気の2つの要因
観光庁の「旅行・観光消費動向調査」に興味深い調査結果が出ている。
日本人1人当たりの旅行・観光における消費実態を調査したものだ。それによると、コロナ禍を経て1人当たりの旅行単価は上昇しているのだ。2019年4月の国内宿泊旅行の1回あたりの単価は6万1860円だった。ところが、2023年4月は6万9135円となり、1割以上の上昇を見せている。日帰り旅行にいたっては、1万6941円から2万552円へと2割上がった。

4月の国内宿泊旅行の単価の推移(※観光庁「旅行・観光消費動向調査」より 筆者作成)
さらに旅行の経験率を見ると、宿泊旅行が2019年の9.29%から2023年は8.50%に低下。日帰り旅行は10.12%から7.97%に下がっている。同様に1人当たりの旅行の回数も減少した。
この結果を見ると、消費者が旅行の頻度を抑える代わりに、1回当たりの旅行で奮発する姿が浮かび上がってくる。東京ディズニーリゾートの入園者数が2019年の水準を回復しない理由も、ここに見出すことができる。
入園客1人当たりの単価1万6566円というのも絶妙な価格だ。観光消費動向調査の日帰り旅行1回あたりの単価は2万552円。全国から集客する東京ディズニーリゾートにおいては一概には言い切れないが、交通費などの諸経費を含めると、平均値に限りなく近づくだろう。旅行先としてちょうどいいレンジに収まるのである。
ファンを魅了する新アトラクションが目白押し
2024年6月にグランドオープンする、東京ディズニーシーの新エリア「ファンタジースプリングス」の存在も見逃せない。
大ヒット映画『アナと雪の女王』をモチーフにした「アナとエルサのフローズンジャーニー」が、新アトラクションとして仲間入りする。その他にも、「ピーターパンのネバーランドアドベンチャー」、「ラプンツェルのランタンフェスティバル」など、誰もが知る人気の世界を追体験できる施設が登場する。

ディズニシーでは新アトラクションが目白押し 写真/shutterstock
オリエンタルランドは、2022年10月27日にこのプロジェクトの投資額が3200億円になると発表した。当初は2500億円と予想していたものが、大幅な修正を迫られた。
これほど大規模なプロジェクトとなると、ファンならずとも期待が高まることは間違いない。久しぶりに旅行に行く場所は、「東京ディズニーリゾート」にしようと考える人が後を絶たないこともうなずける。
オリエンタルランドは集客装置の準備を整えて、それに合わせて着実に値上げを進めていった。その成果が花開くのは、2025年3月期になるはずだ。最高益を達成した同社がどこまで収益力を高めることができるのか、注目の局面に入った。
取材・文/不破聡
関連記事
新着記事
【こち亀】愛しのオウムが行方不明に…孤独な老婦人の願いをかなえるために仕掛けた作戦とは!?

とろサーモン久保田が一刀両断!「今の時代、母ちゃんのこと好きやねんってはっきり言える男、僕はリスペクトするね」マザコン彼氏に悩む36歳女性〈立ち呑み人生相談#2〉
とろサーモン久保田の立ち呑み人生相談#2



江戸時代にビールを飲んだ日本人の感想は「殊外悪敷物(ことのほかあしきもの)」。ラグビー王者も楽しんだ世界一の味を誇る日本のビール誕生秘話
『日本のビールは世界一うまい!』#1