人に自然と好かれるさりげない会話術…初対面の人とたった数分で”信頼”が築ける質問とは?
コミュニケーションが苦手な人にとって、特に初対面の人との会話はハードルが高いもの。だが、人気のビジネスコーチである山﨑拓巳さんには、数分で相手と打ち解けられる質問の仕方があるという。山﨑さんの著書『正しい八方美人になる秘密 人づき合いのコア』より、初対面の人ともすぐに信頼が築ける会話術について一部抜粋・再構成のうえお伝えする。
正しい八方美人になる#1
人に愛を持って接する、とはどういうこと?
若い頃の僕は、決して人づき合いが上手ではありませんでした。仕事を教えてくれた先輩からは、事あるごとに、「お前には愛がない」と言われていました。
最初はその言葉の意味が、よくわかりませんでした。
「チームメンバーに対して、こんなにも時間を割いてやっているのに、これでもまだ愛が足りないのか?」と思っていたからです。

でも、そうやって不貞腐れている僕に、先輩は「それは、お前の成功のためにやっているだけでしょ?」と言うわけです。痛いところを突かれた気持ちでした。た、たしかに……と。では、どうすれば良いのでしょうか。
僕の仕事は、命令ができません。というのも、僕のチームメンバーの多くは副業でビジネスをしているので、報酬や命令で動かすことができないのです。
命令できないときに、どうやって人の心を動かすか。悩む僕に、先輩は、「愛を持って接しなさい」と言います。
でも、当時の僕には、その「愛を持って接する」がよくわかりませんでした。
仕事以外でも接する時間を増やせという意味かな?
もうちょっと優しく接すればいいということかな?
この問いは僕の心の中にずっと残っていました。かれこれ、10年くらい考えていたと思います。
愛の反対は憎しみ、ではない
ずっと心のどこかで愛について考えていたあるとき、古くからの知り合い(てんつくマンという面白い友達がいます)が、
「拓巳さん、愛の反対って何か知っていますか?」
と聞いてきました。
「そりゃあ、憎しみでしょう」
と、僕は答えました。するとその友人は「いや、違う」と言います。
「憎しみは、愛が極まって憎しみになる。だから、憎悪は愛の向こうにしかないんですよ。だから、憎しみは愛の反対ではありません」
というのが彼の言葉でした。なるほど。「では、愛の反対とは何だろう……」。そう考え込んだ僕に、彼は教えてくれました。
マザー・テレサはこう言っています。
「愛の反対は無関心だ」と。
その言葉を聞いて、僕は、ハッとしました。
そうか。「愛の反対は無関心」
ということは、逆に言えば「その人に関心を持つということが愛なのか」と思ったからです。それだったら、僕にもできるかもしれない。
10年以上考え続けてきた悩みに、僕は、ひと筋の光を見出しました。
人に関心を持つためにやったこと
愛の反対は無関心。では、愛を示すには関心を伝えれば良いのではないか!30代の初めにこのことに気づいた僕は、初対面の人とのコミュニケーションの方法をがらっと変えました。
人に関心を持とうと思った僕がやったこと。それは、とても単純で、人の話をとにかく真剣に聞くことでした。

まず、初めて会う人には、名前を聞き、話を広げる。
「どんな漢字を書くのですか?」
「誰がつけた名前ですか?」
「うわあ、お父さん、ロマンチックですね。どんなお仕事をされていたんですか?」
「ご出身はどちらですか?」……etc.etc.
一度「関心を持つ」と決めたら、人に聞きたいことは山ほどあります。そして、こうやって会話をすることで、相手が喜んでくれることにも気づきました。
後から知ったのですが、実は、船井総研の創設者である船井幸雄先生も、新入社員には必ず出身地を聞いて、そこはどんな場所かと尋ねたそうです。
そして、「そんな素晴らしい場所でお生まれになったということは、さぞかし素晴しい人として育つでしょうね」と話をされると聞きました。
さらには、「どんなご両親に育てられたんですか」と尋ね、「そんな素晴しいご両親に育てられたっていうことは、さぞかし素晴しい人生を歩むことになるでしょうね」とも話されるそうです。
どんな場所で生まれたか、どんな親御さんに育てられたか。船井先生のような雲の上の存在の方から質問をもらった新入社員は、どんな気持ちになるでしょう。
きっと、船井先生に関心を持ってもらえたことを、大事に抱えて生きていくと思います。
初対面でもバッチリ関係性ができる質問
人に関心を持とう。それが愛を伝えることになる。
そう考えた僕は、ありとあらゆる人に、出身地を聞くようになりました。船井先生の話ではないですが、出身地の話と家族の話は鉄板です。褒められて嫌がる人はいないからです。

この「出身地を聞く」を続けていると、自然とアンテナが立ってくるようになります。たとえば奈良県出身の人が、今、名古屋に住んでいると聞いたらそれはビビっとくるポイントです。
なぜなら、奈良の人は地元を出るとしたら、たいてい大阪か東京に出るからです。それなのに名古屋に住んでいるとしたら、名古屋大学に行ったのかな? どうしても行きたいゼミがあったのかな? それとも車関係の仕事かな? と、推理を巡らせます。
そして、それを相手に聞いてみる。「うわ、どうして拓巳さん、わかるんですか。そうなんです。どうしても師事したい教授がいて」となる。そこですかさず、「どんな教授だったの?」と聞きます。
出身地の会話から、その人が人生において最も大事にしている価値観を聞き出すまで、ほんの数分。初対面でもバッチリ関係性ができます。そして信頼貯金が貯まります。
この出身地トークは、相手に喜んでもらえるだけではなく、思わぬ副産物も生み出します。あまりに地名とその特徴を聞き続けてきたので、気づくと、エピソードのストックがどんどん増えてきました。
全国のどんな地域の名前を言われても、即ツッコミができるようになってきたのです。たとえば、仙台出身の人の話を深掘りしていくと、次に仙台の人に会ったときの会話のネタになります。
「ねえねえ、仙台の七夕って8月なんでしょ!?」
と聞けば、
「なんでそんなこと知ってるんですか?」
となる(笑)。
「おはよう! 靴下! って言うんでしょう?(靴下が破れたときの表現)」
と言えば、
「そうなんですよ。仙台のこと、お詳しいんですね」
となります。
そうすると話が盛り上がるし、さらに仙台を深掘りしていくと、相手は自分に関心を持ってくれていると感じます。
『青葉城恋唄』の話になり、さとう宗幸の出身地の話になり、広瀬川の話になり……、僕にはさらに仙台ネタのストックが貯まる(笑)。良いことだらけです。
トークをすることで知識も増えていく
出身地だけではなく、人と話をするときは、「今、何にフォーカスしているの?」と聞くことが多いです。すると「数秘術です」なんて答えが返ってきたりする。そうしたらすかさず「数秘術の面白みって何?」と深掘りする。
これもやはり、その人に関心を持っていますよということが伝えられる上に、いろんなことに詳しくなれる方法です。

どんな人にも、「悦(えつ)ポイント」のようなものがあります。この話だったら、いつまででも話せるといった、話して楽しいことです。
余談ですけれど、みなさん、ラクロスって男子と女子でルールが違うのを知っていますか? 同じスポーツなのに、男子は相手のステッキを叩いてもOKで、女子はダメなんですって。面白いですよね。
そんなことも、僕はこの深掘りトークから知りました。昔は、よく「T型人材を目指せ」と言われていました。専門的な知識やスキルをひとつ持ち、それを軸に専門外のあらゆるジャンルに関しても知見がある人材タイプのことです。
でも僕は今、「π型人材」になることが大事なのではないかと考えています。幅広くものを見るのではなく、深掘りできるジャンルが複数ある。そうすると、いろんな収入源を持てる可能性にもつながる。
深掘りトークを続けることで、信頼貯金を貯めることができるだけでなく、π型人材にも近づくことができる。
僕は、人と会うとき、「さあ、今日も楽しく、愛、やるか!」と気合いを入れます(笑)。「愛情を持って接するべきです」と言われるとちょっとしんどいかもしれません。だから、「よし、愛、やるか!」くらいの気持ちでスタートするのもよいかもしれません。くり返しになりますが、「愛=相手に関心を持つ」です。
文/山﨑拓巳 写真/shutterstock
『正しい八方美人になる秘密 人づき合いのコア』
山﨑 拓巳

2023/7/20
¥1,650
単行本(ソフトカバー) : 304ページ
978-4761276812
対人関係で必要なことが全部わかる!
親子、恋人、親友、ライバル、恩人、上司、部下、愛、憧れ、嫉妬、別れ。
著書累計200万部・インスタグラムフォロワーも25万人突破のベストセラー作家「成功の舞台裏」をこの1冊に凝縮。
<本書の主な内容>
○人が人を好きになるメカニズムを知っておく○愛って結局、何?○自分だけ勝とうとしない
○嫉妬はエネルギーに変える○悪口は必ず本人に伝わる○忠告は不要 ○近づきすぎない
○正論は峰打ちで言う ○ 本当の味方は1割もいない ○怒りには怒りで応じない
○噂話はスルーする ○目上の人には魂のしっぽを振る ○親を名前で呼ぶと自立できる.etc
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