#1「当事者が立ち上げた、生きづらさを抱えている人たちが適職を探せるサービスとは」を読む
先日「通常学級に通う公立小中学校児童生徒の8・8%に発達障害の可能性がある」という文科省の調査結果が報道された。8.8%という数字に驚いた方も多いのではないだろうか。
発達障害で悩んでいるのは子どもだけではなく、大人の発達障害者も子どもと同様の割合で存在していると考えられる。大人の発達障害者は支援の必要性を第三者に指摘される機会が少なく、生きづらさを一人で抱え込む方が多いという。
そこで発達障害者がビジネススキルを学べる「キズキビジネスカレッジ」の林田絵美さんと長谷川倫子さんに、社会に出た発達障害者が抱える困りごとや、それに対する対処法について伺った。
工場勤務からスキルを活かせる会社へ転職、笑顔を取り戻した利用者
——発達障害の特性により苦しんでいた人が、自分の適性を知って能力を活かせるようになった事例はありますか?
長谷川 適職を見つけていきいきと働けるようになったといえば、Aさんという方の事例があります。
Aさんは対人コミュニケーションを苦手としていましたが、社会に出てからずっと、体育会系の社風で社員同士の会話も多い工場で働いていました。自分には合わない環境で無理をして働いていたため、Aさんがキズキビジネスカレッジに来たときは、人間不信のような状態に陥っていました。
さっそく面談を実施すると、コミュニケーションが多い環境よりも少ない環境が向いていること、興味があることを黙々と続けることが得意だと判明。そこでAさんには、プログラミングを学べる講座を受講していただきました。
最終的にはプログラミングスキルを活かせる企業に就職して、本来の明るさを取り戻したんですよ。当初の姿とは打って変わっていきいきとして、笑顔も見られるようになりました。
——Aさんに合う職場はすぐに見つかったのですか?
長谷川 実は最初に配属された業務は彼には合っていなかったのですが、企業に働きかけたところ、彼に合う業務の担当に変更してくれたのです。現在はデータベース管理ソフト「Access」のVBA(複雑な処理の自動化などを行うプログラム)を構築する部署で、さまざまな配慮を受けながら活躍しています。
林田 自分の適性がわからずに苦しんでいた方が、適職を見つけて活躍する姿を見ると、自分のことのように嬉しくなりますね。Aさんの他にも、米国大手企業のアナリストとして就職した方や、グローバル会計ファームの人事アシスタントになった方、米国のクラウドサービス企業で翻訳職に就いた方などもいますよ。