どのみちなるようにしかならない
なぜ自分が働こうと突然思ったのか。
深い考えはないんです。ほかのきょうだいから頼まれたわけでもないし、親から言われたわけでもありません。
自分はそういう運命だと思ったんですよ。
誰にも相談せず、自分ひとりで決めたのも、私の中では自然の流れだったような気がします。
悲壮な覚悟なんてなかったし、それでつらいとか嫌だとか、自分ばっかり働いて苦労したとも思いませんでした。
当時は、中学を出て働く人も大勢いたんですよ。「金の卵」といわれ、農村から東京や大阪などの大都市に列車に乗って、集団就職してくる若者も多かったしね。
人生はこういうものなんだなって、感じ。
そのときにはもうすでに、私は自分の世界を持っていたんだとも思います。
うちは、商売をやってたでしょ。子どもが6人もいたでしょ。
生まれたときから、親は仕事で忙しくて、面倒なんてろくにみてもらえなかったんです。
習いごとをしたのも、とりあえず外に出しておけば、子どもの世話をしなくてすみ、仕事ができたからだったと思うの。
そんな環境の中で育った私にとって、自分の頭で考えて行動することは当たり前のことだったのね。
どのみちなるようにしかならないのだから、という思いもありました。
大人からしたら、自分の意見を持っている、生意気で扱いにくい子ではあったと思うけど、私自身は、大きな運命の流れに逆らわずにきたような気がします。