トラブルばかりの人間社会! 今日も世界は、自分とは異なる主義主張を許すことができない人たちの争いに満ち満ちています。皆さんも、思ったことをそのまま口に出してトラブルになったり、逆に「もう何も言えない!」とパニックになったりしていませんか!?
ということで今回は、今年発売された作品の中でも屈指の破壊度を誇る逸品、岡田索雲短編集『ようきなやつら』より、最も「本音と立ち居振る舞いに線を引ける男」こと、「忍耐サトリくん」の御成門忍先生のご紹介です。
目を合わせた人の心の声が聞こえてしまうゆえに人を恐れ、学校生活にうまく溶け込めないサトリくんに、「私にも口には決して出せない不平不満がある。まずは教師である私で練習してみませんか?」と提案した結果がこれ!
あなたできますか? 心の中で「フザケんじゃねェゾコラァァァアアッッ」「いますぐブン殴りてえ」と思っているのに平然とした顔で少年と対話することが。逆に「このまま喉元にトゥキックキメテやろうかァ」って思われながら「大丈夫ですか?」と口先だけで心配されてるのを知ったら平気でいられますか?
外面は人格者! 内面は悪の名言の宝庫! 思うだけなら問題ないとか、自分と異なる考えをもつ人を好きになることは難しいとか、その悪感情を表に出さずにいかにコントロールできるかとか、己の心の中の暴力欲求を完全に抑え込める精神力とか、自分の弱さと真正面から向き合って、それでも自分にできることをなすとか、それが令和の世を生きる大人のあるべき姿とか、作者がこの作品を通して伝えたいことは大変立派なんだけれども、「お前も蝋人形にしてやろうか!」みたいなセリフのバリエーションが多すぎて全然頭に入ってこない!
誰かコイツの頭カチ割って脳みそ調べてくれ、じゃないのよ。その脳をホルマリン漬けにしたいじゃないのよ。
人間が考えうるすべての暗黒が人の形を成した者、それが御成門忍先生、じゃないのよ。
先生は生まれた時代が悪かった。来世では暴力と殺戮の世界に生まれ変わって、その圧倒的悪の語彙力を存分に発揮して、村を襲ったり種モミを奪うことに人生を輝かせて!!
『ようきなやつら』
岡田索雲/双葉社
鎌鼬、河童、山姥、提灯小僧などの妖怪をモチーフとして、現代社会にも通じる諸問題をハードに風刺し、WEB上で話題騒然となった岡田索雲妖怪読み切りシリーズが単行本化!
©岡田索雲/双葉社