フランスのマンガ市場拡大と競争激化を受けての斬新な大型企画
ヨーロッパ最大の規模を誇り、日本マンガの売上が全体の3割程度を占めると言われるフランスのマンガ市場。その売上は2021年には前年比50%成長を遂げて、約9億ユーロ(1ユーロ130円計算で約1170億円)に達した(GfK調べ)。
市場拡大の背景について、『怪獣8号』のフランスの発行元であるKazé Franceのマーケティング/セールス部門のマンソー部長は次の3つの要因があると分析をしている。
① コロナ禍でインドア娯楽の需要が高まるなか、フランス政府が2021年5月から若者に配付した300ユーロ(約4万円)の「カルチャーパス」(pass Culture)の7割がマンガに使われたこと
② Netflixやクランチロールなどの動画配信サービスが普及したことでアニメがより身近なものとなり、原作コミックへの関心が高まったこと
③ 『DRAGON BALL』や『ONE PIECE』を読んで育った世代が親になり、従来若者が読むものだった日本のマンガの年齢層が上下に広がってきたこと
フランス国内では、日本のマンガを翻訳する会社間の競争が激化するなど、かつてないほどマンガ市場が好況だ。だからこそ、『怪獣8号』は図書館ジャック以外にも様々な宣伝施策を行っている。
パリの駅ナカのデジタルスクリーンに1巻のイラストを使った広告を掲示。マーベル映画の上映前に公式のマンガトレーラーを流す。泡が出る銃と『怪獣8号』のイラストを使った的、防護服や怪獣8号のお面などを詰め込んだ「プレスキット」をインフルエンサーに配布。プレスキットを開封する動画をSNSに投稿してもらう……などまるで映画のプロモーションで行うようなレベルの施策を連発し、注目を集めることを狙った。
――しかし、なぜ『怪獣8号』だったのか。