テスラのスタンダード=余計な操作を排除する

早速走り出す。モデル3同様、ハンドルから右に伸びるレバーを押し下げると、シフトが「D」に入る。このレバーは、メルセデスのシフトレバーと同じ使い勝手だ。反対に、左に伸びるレバーは方向指示器とライトのハイビーム操作に使う。押し下げるとすぐに中央に戻る仕組みは、昔のBMWを彷彿とさせる。

自動車メーカーとして完全に後発のテスラは、ハイグレードな自動車に乗っていた人たちをターゲットにすることで、「価格競争に巻き込まれない」マーケティングを展開してきた。バッテリー調達にコストがかかるため車両価格を安くできない、という電気自動車共通の事情から、「安く売らなくていい車」を手がけているというのが現状だ。

その点、「右のシフトレバーがメルセデス、左の方向指示器のレバーがBMW」という、市場で力のあるメーカーの操作性をいいとこ取りをするあたりも、テスラの巧妙なマーケティングが現れているといえる。

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「モデルY」のハンドル部分

少し話が逸れたが、上記の操作以外は、基本的にはタッチパネルで行う。というと、「画面を見なければ操作できないのではないか」「メニューを呼び出すのが煩雑だ」というドライバーの意見が出てくるのは想像に容易い。実際に筆者も、モデル3に乗り始めた頃はそう思っていた。

しかし2〜3ヶ月ほど乗ってみて、さまざまな場面での運転を経験してみると、タッチパネルを使った操作への不安や不満は皆無になっていた。

というより、テスラにおいて、タッチパネルは「ほとんど操作しない」のである。

たとえば、ライトは「自動」に設定しておけば、暗くなったときに勝手に点灯する。ワイパーも「自動」にしておけば、雨が降ったときには自動で作動してくれる。エアコンだって、21℃に設定したうえで「自動」にしておけば、いつでも快適に過ごせる。車に乗り込めば、iPhoneのカレンダーに入っている次の予定の場所を、ナビが自動的にセットしてくれる。そもそも、タッチパネルの電源オン/オフといった操作も不要だ。

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運転以外の基本操作は、すべてタッチパネルで行う。15インチでマップも確認しやすい

ドライバーとしては退化してしまうのではと感じるほど、ほとんどのことを車がやってくれる。人間は、運転だけに集中すればいい。

また高速道路に入ったときには、シフトレバーを素早く下に2度押し下げて、「オートパイロット」機能を起動。こうすれば、車速を維持しながら前方の車に追随し、車線をキープするところまでを車がアシストしてくれる。ドライバーはハンドルに軽く手を添えるだけなので、長距離でもラクに移動できる。

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高速道路での運転をアシストしてくれる「オートパイロット」モード

マニュアル車から車に乗り始めた筆者も、「運転する楽しさ」に心得があると自負している。しかし、テスラに乗り始めてから「運転にだけ集中する」ことの快適さを知ってしまった。

モデルYも、まったく同様の体験を提供してくれる。