大切な人に、大事なことを伝えているか
——完成した映画を、観客にどのように感じてもらえるとうれしいですか?
僕はテレビドキュメンタリーでも、答えを押しつけるようなものは、作りたくないと思ってるんです。この映画も、いかようにでも解釈できるように作ったつもりなので、たくさんの方の、たくさんの解釈で、作品がどんどん育っていったらいいな、と思います。
僕個人としては、失踪する人と待つ人の思いを考えながら作ったわけですが、完成したときに頭をよぎったのは、「自分は、大切な人に、大事なことをちゃんと伝えられているだろうか」という問いでした。そんなふうに、それぞれの読後感を味わっていただけたら。
——考え続けた結果、「失踪する人の気持ち」はわかりましたか?
そこは結局、まったくわからないです。いなくなる理由は、いっぱいあるのかもしれないし、もしかすると意外と何もないのかもしれない。監督としては、そこはわからないほうがいいのかもしれないとは思いましたね。わかってしまうと、ものすごくつまらない映画になる気がするので。
——次回作の予定は?
それもまだわからないです(笑)。『家路』を作ったときに「2〜3年に1本撮って、最低3本は劇映画を」と考えていたんですけど、もう大幅に予定が狂っている。みんなで知恵を出し合って、不可能を可能にしていく「映画作りの楽しさ」を知ってしまったので、今後も作り続けていきたいですね。
取材・文/泊 貴洋
場面写真/©︎2022映画『千夜、一夜』製作委員会
『千夜、一夜』(2022年)
監督・編集/久保田直
脚本/青木研次
出演/田中裕子、尾野真千子、ダンカン、安藤政信、白石加代子、山中崇、平泉成、小倉久寛 ほか
配給/ビターズ・エンド
北の離島の美しい港町。登美⼦の夫が突然姿を消してから30年の時が経った。彼はなぜいなくなったのか。⽣きているのかどうか、それすらわからない。漁師の春男が登美⼦に想いを寄せ続けるも、彼女がそれに応えることはない。そんな登美⼦のもとに、2年前に失踪した夫を探す奈美が現れる。彼⼥は⾃分のなかで折り合いをつけ、前に進むために、夫が「いなくなった理由」を探していた。ある⽇、登美⼦は街中で偶然、失踪した奈美の夫・洋司を⾒かけて…。
10月7日(金)テアトル新宿、シネスイッチ銀座ほか全国公開
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