熊本高3女子インスタいじめ自殺事件

②は、ネットいじめならではの特徴です。かつて教室や校庭で行う「お葬式ごっこ」のようないじめがありました。しかし、今はお経や弔辞を流した葬式動画を作成してネット上に流すなどといったものに発展しています。

またヌード画像に生徒の顔をつけた写真や、売春をしているなどの偽情報をネット上に拡散させるものもあります。偽画像や偽情報であっても、被害者にとっては耐えられることではありません。

さらに③のように被害者が、加害者を訴えたくても、匿名性の高さゆえに犯人を特定できないこともあります。逆に言えば、加害者は被害者を攻撃する際、巧みに証拠を隠すのです。

最後に挙げられるのが、子供たちがいじめの際につかっているネット言語です。例を出せば、「ガイジ(障害児)」「池沼(知的障害者)」「自宅警備員(ひきこもり)」「ナマポ(生活保護受給者)」といったネット言語があります。

これはネットの世界では普通に飛び交っている言葉(ネットスラング)であり、それゆえに子供たちは罪悪感を抱かずにネットでもリアルでも発します。しかし、言われた本人は、どれだけのショックを受けるでしょうか。

実際、拙著では熊本在住の高校3年生の女子生徒が、インスタグラムの投稿がきっかけになり、クラスの人たちから「ガイジ」「死ね」「ネズミ」などと言われ、ついには自ら首を吊って亡くなるという事件をルポしました。

いわば、ネット上で飛び交っていた言語が、リアルの教室にまで波及し、それが尊い命を奪ってしまったのです。

加害者は自分たちの言葉が、女子生徒を死に追いやるほどの暴力性があるとは認識していなかったようです。これは、子供たちが言葉の暴力性にどれほど無自覚であるかを示しています。