「介護保険」を活用して悩み解消&生活の質向上を

転倒がきっかけで歩行器や杖を使っている高齢の家族がいる場合は、お家でできる範囲で手伝いをお願いすることも、高齢者のやりがいや活動力を上げるポイントかもしれません。自分一人では歩く気が起きなくても、人は役割を与えられることでと頑張って歩こうと思えるからです。

なお、歩行器・歩行補助杖を高齢の家族にプレゼントしたいと考えている方は「安いから」とネットで購入せず、できればかかりつけ医やリハビリを担当する理学療法士、または介護用品を扱う専門店の店員さんに相談しましょう。なぜなら歩行器・歩行補助杖は、きちんとした器具を正しく使うことが重要だからです。

ご家族と同居しておらず、お子さんが遠くに住んでいていわゆる「老老介護」を行なっている方は、パートナーの介護に手一杯で、なかなか環境を整えることまで手が回らない、という場合もあるでしょう。そんな時は地域のサービスを活用することも考えてみてください。

特に介護保険を利用されている方は、困りごとがあれば地方自治体の窓口やケアマネージャーさんにぜひ相談を。手すりの取り付け、歩行器・歩行補助杖の貸し出し、生活援助による掃除などなど、介護保険適用のサービスは実にたくさんあります。地域で介護者のケアを行う組織、コミュニティ、ヒトにアクセスすることが、住み良い環境作りにつながる可能性は大いにあるでしょう。


取材・文/金澤英恵 撮影/金栄珠(講談社写真部)

最高の老後 「死ぬまで元気」を実現する5つのM
山田悠史
「転倒」は高齢者の人生を狂わせる。次に転ぶ前に家族ができること_1
2022/6/24
1,980円
単行本(ソフトカバー) ‏ : ‎ 384ページ
ISBN:978-4065285664
高齢者の2割には病気がないことを知っていますか?
今から備えればまだ間に合うかもしれません。

日本人の平均寿命は男性が81歳、女性は86歳。
でも、元気に自立した生活を送ることができる期間である「健康寿命」は、男性なら約72歳、女性なら約75歳と報告されています。
日本人は最後の約10年を、支援や介護を受けて生きているのです。

・65歳以上の約10人に1人は車椅子か寝たきり
・65歳以上の約6人の1人は認知症
・65歳以上の約3人に1人は5種類以上の薬を毎日飲んでいる
・65歳の約5人の1人は、少なくとも1つ以上の慢性疾患をもつ
・死に直面している人の約10人中7人は自分で意思決定ができない

これらの現実をどうしたら変えられるか、最後の10年を人の助けを借りず健康に暮らすためにはどうしたらよいのか、その答えとなるのが「5つのM」。
カナダおよび米国老年医学会が提唱し、「老年医学」の世界最高峰の病院が、高齢者診療の絶対的指針としているものです。

【5つのM】
Mobility ーーからだ
Mind ーーこころ
Multicomplexity ーーよぼう
Medications ーーくすり
Matters Most to Me ーーいきがい

ニューヨーク在住の専門医が、この「5つのM」を、質の高い科学的エビデンスにのみ基づいて徹底解説。
病気がなく歩ける「最高の老後」を送るために、若いうちからできることすべてを考えていきます。
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