寝たきり生活からの復帰を後押しする「住空間」とは

手すりのような「足し算」の対策もあれば、「引き算」の環境整備も欠かせません。例えば、家具を減らして動線を広くする、配線コードを整理する、ラグマットをなくすなど、高齢者がつまずきそうな要因を「引き算」していくのです。

昔はまめに片付けていた方でも、高齢になると掃除もままならなくなるもの。親御さんが物が多い・物が散乱した部屋で暮らしているようなら、片付けを手伝うだけでも環境作りにはプラスになるでしょう。

また「灯り」もキーワードの1つです。夜寝る時もトイレまでの廊下の電気は点けておくなど、暗がりを作らないことも転倒防止に。日常的に歩き慣れた場所とはいえ、加齢によって視力が落ちていれば暗がりでつまずくリスクは増加します。電気代が気になる場合は、人感センサーで反応するライトを取り付けるといいかもしれませんね。

こうして居住環境を整えることは日々の転倒を防ぐだけでなく、「転倒からの復帰」を早めることにもつながります。転倒による骨折で入院する高齢の患者さんは、病院では1日の大半をベッドで過ごすことも少なくありません。

当然、日が経つにつれ筋力も落ち、活動力もみるみる下がってしまいます。そんな時、お家の環境が整っていれば「普通の生活に戻っても良い」と医師が判断を下し、早く退院できる場合があります。逆に家の環境が整っていないと「この環境で普通に生活するのは難しい」と判断され、入院が長引いてしまうケースも。

「1回転んだぐらいで対策を講じるなんて」と思った方もいらっしゃるかもしれませんが、早めの転倒防止対策はもしも2回目が起きてしまったり、さらには骨折してしまった後でも、しっかり役立つものなのです。