減少食い止めの鍵は「格好よさ」にあり?
池井戸 頭が下がりますね。参加を呼びかけるためには、どんな啓発活動を?
内藤 ひとつの試みとして、まずはお子さんたちに消防団について知っていただこうと、文部科学省と協力して今年度から小学校の防災教育の時間に地元の消防団の方々を派遣し、消防や防災についてのレクチャーや実演を行っていただいています。お子さん方が家に帰って保護者の方々に伝えることで、存在に気づくきっかけになればと願って。また、学生消防団、女性消防団の活動があることを知っていただく啓発活動にも取り組んでいます。コロナ禍でなかなか勧誘活動がしにくい昨今、全体としての消防団員数は減少しているんですが、学生消防団員と女性消防団員の数は少しずつ増加しているんですよ。
池井戸 確かに、大学に応援団があるなら、消防団があってもいいですよね。あと、消防団での活動を、その方の勤務先の企業などにもっと認めてもらえるといいのではないでしょうか。
内藤 おっしゃる通りです。積極的な地域貢献として認めてくださる事業所も多少はありますが、消防団員の方々がさらに活動しやすくなるよう広くお願いをしていて、消防団から招集がかかった際はそちらを優先できるように協力を呼びかけています。そうした事業所に表示証を掲げていただく「消防団協力事業所表示制度」も広めている最中です。
池井戸 それならわかりやすいですね。
内藤 あと、作品の中でも触れていただいていますが、消防団活動には少額ではありますが手当が出ること(「団員」階級の者については、年額3万6500円が標準。出動報酬は別途)なども……。大事な活動をしていただいているわりには、活動実態の認知度が低いんですよね。ですから今回、お取り上げいただいたことを本当にありがたく思っているんです。少しでも多くの方に、とくに若い世代の方々に消防団の存在と活動の意義を知っていただけたらと。
池井戸 いえいえ、微力ではありますが……。思えば、小説の中ではハヤブサ分団のメンバーがしょっちゅう飲み会をやっているんですが、ああいうのもちょっと若い人には引っかかるかもしれませんね。何かあるとすぐに「飲みに行こうや」というのは面倒くさいと(笑)。
内藤 フフフ。しかし、実際どんな雰囲気なのかを知っていただくのは、いいことだと思います。池井戸さんの作品はテレビドラマや映画になることが多いですが、もし『ハヤブサ消防団』が映像化されることがあれば、ビシッとした若い消防団員の姿を紹介していただけると、さらにありがたいのですが……。
池井戸 さあ、どうなることでしょう(笑)。あと、思うに消防団のユニフォーム、あれをもう少し格好よくしていただけるといいんじゃないでしょうか。あの色使いは、どうも。ところで内藤長官も、ユニフォームはあるのですよね?
内藤 私のは、これですね(ロッカーから長官用のユニフォームを取り出す)。
池井戸 ああ、これなのですね。あ、これは階級章? 五つ星ですね。
内藤 そうですね。五つ星をつけているのは、消防庁長官のみです。
池井戸 旗もありますね。これは式典などの際にはずっと傍に?
内藤 はい。やはり組織だった活動をするわけですから、こうしたものがいざという際には目印になるんです。
池井戸 就任される際、敬礼の練習などもなさったんでしょうか。
内藤 ええ。長官として消防職員の方や消防団員の方と対面する機会が多いですから、そのときに「締まりがないな ……」と思われるとまずいですから(笑)。
池井戸 さすがですね。そうそう、うちの地元の消防団はそこらにある制服を適当に着ていたらしいんですが、あるときいちばん下っ端のやつが、もっとも階級の高い服を着ていたことがあったとか(笑)。まだわかりませんが、もし『ハヤブサ消防団』の続編を書くことになったら、そういうリアルなエピソードをさらに集めて盛り込みたいと思っています。
※本対談は2022年6月17日に実施しました。