フランシス・フォード・コッポラ監督はプライベートでも超人!

戸田さんが字幕翻訳者としてキャリアをスタートさせるきっかけとなったフランシス・フォード・コッポラ監督とも、家族ぐるみでの付き合いがある。

「彼は馴れ馴れしく人と付き合うタイプじゃなく、いつも物静かで哲学者みたいな人。カリフォルニアのナパにワイナリーを持っているので、今やフィルムメーカーというよりワインメーカーなんだけど、そこの広い邸宅に泊めていただいたことがありました。自動車がないと移動できないくらい広大な土地に、おうちや編集室などのいろんな建物が点在していて、その中に図書館もあるんです。毎日、図書係が出勤して常駐しているんですが、それくらいフランシスは勉強家。何を聞いても知らないことがないくらい博識だし、アーティスティックで、尊敬しかない。もう超人です。だから“フランシス!”と名前でお呼びしても、いつもそこに敬意を込めています。また、奥様のエレノアさんも素敵な方でね。一緒に金沢旅行をしたりする遊び仲間です。彼女はダイアン・レインを主演にした『ボンジュール、アン』という映画の監督をしたりもしていますし、ご存じの通り、お嬢さんのソフィア・コッポラも映画監督として活躍している。本当に才能あふれる一家だと思います」

来日のたびに旅行に何度も付き合ったというのがリチャード・ギア

「彼は本当にハンサムかつモテモテのプレイボーイだったから、最初の子供ができたのが50歳を過ぎてから。そして4年前にはスペイン系のソーシャライツ(上流階級の社会活動家)の女性と再婚して二人のお子さんが産まれたの。その子たちが本当にかわいくてね。彼は今72歳だから、子供というより孫みたいな感じなんだけど、いつもメールで子供たちの成長過程を記録した写真を送ってくれます。リチャードってものすごく写真を撮るのが上手なの。二人のモノクロの後ろ姿とか、いい写真がたくさん送られてきます。老け役をあまりやらない人だから今はそれほど出演作品が多いわけじゃないけれど、いい役者だと思いますね。私は何百人ものスターとお会いしてきましたが、こうして親しくなるのは数えるくらい。誰にだって、気の合う人と気の合わない人、会った瞬間になんとなく呼吸が合って仲良くなる人がいるでしょう。それと同じです。もちろん、厳しい世界で羽ばたいている彼らはものすごく才能と個性がある。そういう人たちと会えるのは幸せだし、私にとっても刺激になっています」



取材・文/松山梢 イラスト/Chie Kamiya

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