そんなミステリーツアーで英里のような聖女がいるのか確かめにくるのも一興といえる。
竹田市では歴史や地政を学ぶのにもよいと中学校での課題図書に今作を指定する話もあり、その熱は現在、大分合同新聞の連載小説として赤神氏が新たに手がける『誾(ぎん)―GIN―』にも継承され、挿画を大分市の県立芸術高校に在籍する美術科の生徒80人が担当するプロジェクトとなっている。
一連の反響や盛り上がりを実感し、「市民参加型の小説による町おこしのモデルになる」と手応えを感じた赤神氏は、同様のアプローチを仕掛けられないかと他でも企画を思案中だ。
「歴史や自然を生真面目にアピールするだけでなく、エンタメにする手もあるのでは。コストがかかるアニメより小説はコスパもいい。作家ひとりで済む話ですからね(笑)。日本各地の自治体とこういう試みが広がらないかと、実際に候補を探っているところ。実はすでに大分合同新聞とのご縁から新潟日報さんを紹介してもらい、佐渡島を舞台にして書く話も進行中です」
本をなかなか読んでもらえなくなった時代に少しでも興味を持ってもらうため、こうしたアイデアで掘り起こし「満足のいく面白い作品を書くしかない」と意気軒高な赤神氏。これは!とアンテナに響いた方はまず今作を読んで魅力を堪能していただきたい。所縁ある地がNEXT竹田に名乗りを上げるか――列に並ぶのは早い者勝ちだ。
取材・文/集英社文芸編集部 撮影/首藤幹夫 写真提供/大分合同新聞