コロナ禍で新たな料理作りの苦痛が生まれた
料理教室を開いて15年、のべ1万3000人の生徒さんと接してきた中で、皆さんがよくおっしゃるのは「私は料理できないんです」「ウチで作ったものなんて誰にも見せられませんよ」とおっしゃる方が多く、軽く驚きました。
ベテラン主婦の方でもそうおっしゃるんですよね。
でもよく聞いてみると、皆さん「梅干をつけた」「塩麴から作った」とか話されるので、全くしない・できないではなく、「したいけど思うようにできていない」のか、「やっているんだけど、もっとやっている人がいるので自分はダメだ」と思っている人が案外多いということを実感しました。
私たちの母親世代は料理については、ご近所同士でお裾分けするなどもっと開けっぴろげでしたが、今はSNSなどで見ず知らずの人の一番いい瞬間の料理の情報が溢れすぎているので、そのことも「なんで自分はできないのか?」という気持ちにさせてしまいます。
また、コロナ禍によって外の生活と遮断されてしまい、その分、家での過ごし方に重きを置くようになりましたよね。「料理くらいおいしいものを食べたい」「せめて食事で変化をつけたい」というプレッシャーが料理の作り手をますます悩ますようになりました。
さらに、生徒さんからよく聞く声に「1日中、誰かの食べる時間に合わせて料理を作っている」ということでした。
普段自分ひとりなら、朝食べたら、昼は小菓子程度をつまんで特に料理を作らなかったのに、子どものオンライン授業の切れ目に、お父さんのミーティングの休憩になど、スケジュールに合わせて作るのが大変そうでした。
また、子供用には甘口、大人には辛口になど味やボリュームのパターンを複数用意しておかないといけなくなったというのも、コロナ禍によってもたらされた新たな料理作りの苦痛ですね。