豪快さの中にある精緻さ

国体でも、その姿勢が見えた。例えば後半に基礎点が1.1倍になるところで、3回転ルッツ+3回転ループを狙った実験的内容に挑んでいた。当時は失敗したものの、五輪に照準を合わせていたのだろう。

また、練習を積んできたサルコウは出来栄え点(GOE)を獲得する形で降り、安定したジャンプになりつつあった。

「トリプルアクセルの苦戦も(伝えられていたが)想定内で、自分が思っていたよりはよかったと思います」

樋口はそう語って、ここでも先々へのビジョンを感じさせた。

「アクセルは感触がつかめてきたんですが、他のジャンプが細かいところでミスが出て点数がなくなるところもあって。アクセルに偏りすぎていたので、できることをたくさんやって、完璧にしていきたいと思います。

プログラム作りを含めていつも以上に敏感になって、攻める気持ちでやっていきたいですね。他の人の演技や自分の演技を研究して、強みに変わるプログラムにできるように」

豪快さの中にある精緻さというべきか、彼女はしっかりと”五輪までの逆算”ができていたのだ。

それが冒頭に記した、全日本での完熟した演技につながったと言えるだろう。後半の3回転ルッツ+3回転トーループは大きな得点源になっていたし、3回転フリップもGOEを稼いでいた。

武器であるトリプルアクセルも、ベストに近かった。何より、『ライオン・キング』という生涯のプログラムに出会う僥倖があったのだ。