「絶対、オリンピックに行きたい」
2018-19シーズン、樋口はケガもあって出遅れる。全日本では5位に低迷し、世界選手権出場も逃した。
だが2019-20シーズン、光明を見いだす。樋口は全日本で再び2位に返り咲いて、徹底的に自分と向き合った証を示した。
「自分で体を管理できるようになりました」
岡島コーチは、今シーズンの樋口の変化を全日本後に説明している。
「本人なりに(体を)絞ってきて。ジャンプも調子は上がってきたので、今回はいけるかな、というのはありましたね。プログラムを最後までやり通すことができていましたから。(体重管理に関しては)タッチしていないです。『痩せろ』というのは、本人が嫌だと思うので言っていません。普段の練習の中で、自分で管理できるように。大人になったと思います」
甘い物や炭水化物を抜く食事制限だった。好物の白いご飯を口にせず、夜の厳しいトレーニングもやり抜いた。体が軽くなったことで、ジャンプも飛びやすく、終盤まで体力が続くようになった。
これにより慢性的になっていたケガも消えた。トレーニングを増やしながらの体重管理で、自然と筋量が上がり、感覚も研ぎ澄まされていた。
ただ、出場予定だった世界選手権はコロナ禍で中止が決まった。2020-21シーズンは大会中止が相次いで、試合の中で技量を高めることができなかった(このシーズンは2試合のみ)。
それは場数を踏んで強くなる樋口にとっては、大きなダメージだったと言えるだろう。NHK杯ではトリプルアクセルを降りて2位になったが、全日本は7位に低迷した。
しかし、彼女はこの時、すっかりと落ち着きを取り戻し、虎視眈々と次なる目標に照準を合わせていた。
「絶対、(北京)オリンピックに行きたいです」
2021年1月、愛知国体に出場した樋口は声に力を込めたが、確信があるようなトーンだった。
「(シーズンを通して)すごく悔しい1年ではありました。でも、ここから次の1年にどうつなげられるか。それを考えられるようになってよかったというか。複雑ではありますけど、来シーズンにつながる1年になったので、その点では良い1年だったなと」
北京五輪に向け、どこにスケーティングのピークをもっていくのか、それを計算しながら、技術改善に集中していた。