今回のゲストは、“身につける養生”をテーマにものづくりを行う「RELIEFWEAR」(リリーフウェア)の鳥羽由梨子さんです。洋服を選ぶとき、みなさんはどんな基準で選びますか。鳥羽さんが手がけるブランド「RELIEFWEAR」では、体をいたわるためのボトムスや靴下を展開しています。着る・履くという概念から、なぜ“いたわる”“養生する”というものづくりに至ったのでしょうか。前半では「RELIEFWEAR」誕生のきっかけから商品開発秘話、今後の展開について話を聞きます。(この記事は全2回の1回目です)
虫垂炎を機に「養生」のための衣服ブランド立ち上げ
鳥羽さんがブランドを始めたきっかけは、30代で経験した体の不調でした。2016年、36歳だった鳥羽さんは、今まで感じたことのないお腹の痛みを感じ病院を受診。待合室で意識を失い、倒れてしまいます。痛みの原因は虫垂炎でした。実は2年ほど前から不調があったことを振り返ります。
「元々お腹が痛くなりやすいタイプで、仕事で大きな展示会やイベントの前になると高熱が出ることもありました。実は、その日は結婚の2日前だったんですよね。入院して薬で散らす方法で治療しましたが、その後も疲れが溜まるたびに痛みが出てしまい薬が手放せない状態でした。2年後には改めて手術をし、虫垂を取ることにしました。そんな経験から、体の不調は根本から改善しないと良くならない、体のことをもっと詳しく知りたいと思うようになりました」
手術後の傷の痛みで着るものに困り、それを機に、独学で身体のことや衣服について調べ始めます。次第に「自分と同じように不調に悩んでいる人がいるのではないか」「私が学んでいることは他の人にも役立つんじゃないか」と思うように。2019年には、養生のための衣服のブランドを立ち上げようと思います。鳥羽さんは当時、デザイナーのセキユリヲさんが主宰する雑貨ブランド「サルビア」で働いていました。サルビアでは、商品企画、生産管理、イベントの運営や取材など幅広く仕事をし、充実した日々を過ごしていました。
「サルビアにはアルバイトから入社し、いろいろな経験をさせてもらいました。主宰のセキさんは、やりたいことはチャレンジしてみたらいいという精神の方で、自分のやってみたいことが実現できるありがたい環境にありました。サルビアでは、小冊子『季刊サルビア』を作っていて、一つの商品ができるまでを取材して、工場見学させてもらったり、職人さんや作り手の方に話を聞いたり。そこからものづくりの楽しさや伝える面白さを教わりました」
“救済”“解放”という意味の“RELIEF”をブランド名に
サルビア時代に出会った製造先や作り手が、「RELIEFWEAR」のものづくりにもつながってきます。2020年3月にはサルビアを退社、準備期間半年ほどを経て、2020年8月に「RELIEFWEAR」をスタートします。“身につける養生”をテーマに、自然な身体の在り方とこころに作用する美しさを大切に。一つの製品が、ストレスを一つ減らしていくものづくりをしています。活動を始めた2020年はちょうどコロナによる自粛が始まった時期でもあり、「それも意味のあるタイミングだったのかもしれない」と振り返ります。
「ブランド名を考えるにあたり、一番大事にしたのは、不調を感じている人の痛みを減らしたい、ストレスを解放したい、という思いでした。“自由”“解放”というキーワードを入れたいと考えていた時に、“RELIEF”という言葉に“救済”“解放”という意味があると知りました。私が考えるイメージに一番近い言葉だと感じ、ブランド名にしました。そうしている内に予想もしていなかった、コロナ禍がやってきました。家にいる時間が増えて、自分と向き合ったり、体調に気遣ったりと、暮らし方や生き方が大きく変化した時期でもありました。『RELIEFWEAR』という名や“身につける養生”というテーマが、沢山の方に共感してもらえるタイミングでした」
「RELIEFWEAR」では、ボトムスや靴下など下半身に身に着けるアイテムにこだわっています。その理由は、不調が下半身の血流の悪さから起こることが多いからだと鳥羽さんは言います。