赤ちゃんポストからはじまる不思議な旅
みなさま、こんにちは。
ヨガ講師やセラピストなど女性の体と心の健康にまつわる活動をしている仁平美香です。今回は、今年のカンヌ国際映画祭で、主演のソン・ガンホさんが最優秀男優賞を受賞されたことでも話題の新作映画『ベイビー・ブローカー』を紹介します。
本作は是枝裕和監督の3年ぶりの映画ということで、これは絶対に外せない!と楽しみにしていました。
今月のコラムの作品をいくつかの中からゆっくり考えようと思っていたのですが、鑑賞後、試写室を出た後も余韻がずっと消えず、気づいたらカフェに飛び込んでコラムを書きはじめていました。自分なりの感想を書き留めておきたいという気持ちが抑えられなかったのです。
クリーニング店を営みながらも借金をかかえるサンヒョン(ソン・ガンホ)と赤ちゃんポストのある施設で働くドンス(カン・ドンウォン)は、子供がほしいと願う家庭に裏で赤ちゃんを売るブローカー。
ふたりはポストに預けられたばかりのウソンという赤ちゃんを施設から連れ去りますが、思い直した母親ソヨン(イ・ジウン)が戻ってきたことで、成り行きから、買い手探しの旅に同行させることになります。
そこにドンスが育った児童養護施設の少年も加わって…。
ブローカー商売を、かわいそうな赤ちゃんのために養父母を探す善意からの行動だと開き直るサンヒョン。
自らも施設で育ち、捨てられることの痛みを誰よりも理解していて、転売屋の気配にも敏感なドンス。
頑なにこころを閉ざし、里親候補が気に入らないと口汚く食って掛かる母親ソヨン、そして赤ちゃんのウソン。
でこぼこした偽りの家族の旅で一行は時にぶつかりながらも、協力して赤ちゃんの世話をし、ささいな日常をともに過ごすことでお互いを少しずつ理解していきます。その過程はソヨンの気持ちを徐々に溶かしていくことに。