「24のフロア」と圧倒的な品揃え…渋谷店が特別だった理由

そもそも、ハンズ渋谷店は同社にとってどのような存在だったのか。

東急ハンズの歴史は1976年に始まった。渋谷店は1978年に3店舗目として開業。現在営業するハンズの店舗の中でも、最も長い歴史を持つ店となった。

開業当時、一般的なホームセンターとは異なり、都会の真ん中で専門的な材料や工具を手に取れる場所は珍しかった。

店内に足を踏み入れると、階段を上るたびに異なるジャンルの商品が現れる。文房具を探しに来たはずが、いつの間にか模型の材料やDIY用品を眺めている。そんな寄り道ができることも、渋谷店の魅力だった。

特に特徴的なのが「スキップフロア」と呼ばれる構造だ。

1階から少しずつ様変わりする店舗構造が特徴的だった渋谷の東急ハンズ(写真/shutterstock)
1階から少しずつ様変わりする店舗構造が特徴的だった渋谷の東急ハンズ(写真/shutterstock)

坂道の地形を生かし、フロアを少しずつずらして配置。計24の売り場が複雑につながる独特の店内は、通常の商業施設とは違った、探検するような買い物体験を生み出していた。

売り場面積は約5494平方メートル、取り扱う商品は約10万SKUに上るとされる。ハンズの広報担当者は、渋谷店の位置づけについて次のように説明する。

「渋谷店は1978年の開業以来、都市型ホームセンターの先駆けであり続けるとともに、新しい商品や使い方の提案、ものづくりの文化を発信し続ける象徴的な店舗でした」

さらに、渋谷店ならではの特徴について振り返った。

「24のフロアを結ぶ特徴的なスキップフロア構造や圧倒的な品揃えを通じて、お客様一人ひとりの『つくりたい』『やりたい』という想いに寄り添い、新しい発見やワクワク感をお届けする存在であったと考えております」(広報担当者)

単に多くの商品を販売するだけではない。自分で何かを作ったり、暮らしを工夫したりするきっかけを提供することが、渋谷店の役割だったという。

ハンズにとっても、長年にわたり「ものづくり」の楽しさを伝えてきた渋谷店は特別な存在だったようだ。

「この渋谷店のDNAは他店舗にも引き継いでいきたいと考えています」

広報担当者は、閉店後もその精神を受け継いでいく考えを示した。