長く密着して最も印象に「女将さんの立ち居振る舞い」

――撮影では、あえて相撲を知らないふりをして質問することもありますか?

あります。番付のこととか、これだけ長く撮っていたら知っていることもありますけど、あえて聞きます。テレビ時代の癖だと思います。ナレーションや説明テロップを入れないので、自分の言葉ではなくて、相手の言葉で視聴者にもわかるようにしたいんです。

――部屋に長く密着していて特に印象に残っていることは何ですか?

引退した舞蹴の断髪式は印象深いです。撮っているとすごくよく喋る人で、兄弟子として後輩たちのこともよく見ていました。自分のことだけじゃなくて、「差し入れをいただけるなら、自分個人より部屋全体にもらったほうがありがたい」とか、そういう気遣いが普通に言える人でした。

その舞蹴が引退後、千秋楽パーティーで断髪式をした際に、ずっと一緒に切磋琢磨してきた狼雅関が泣いていたり、女将さんの立ち居振る舞いが一番印象に残っています。

涙を堪えながら舞蹴に「お疲れ様でした」と。その瞬間、僕も現場で初めて涙が出ました。「勝った、負けた」とか、「番付が上がった、下がった」とか、そういう一面も撮ってきましたけど、あのときに、相撲部屋ってそれだけじゃないんだなと思いました。

何年も一緒に暮らして、稽古して、ご飯を作って、後輩の面倒を見て、それで最後に一人を送り出す。力士の人生そのものを部屋全体で背負っている感じがしました。

――まさに相撲部屋YouTubeの真髄のようなお話ですね。『二子山部屋 sumo food』といえば食事も印象的です。数々のメニューを撮ってきて、「これは食べたい」と思った料理を3つ挙げるなら何ですか?

出沼の唐揚げ、小滝山の角煮、あと生田目のラーメンですかね。

――ラーメンも印象に残っていますか?

残っています。ちゃんと下処理からやっていて、2日間かけてスープを作っていた豚骨ラーメン。あれは美味しそうでしたね。

――料理を撮っているときも、力士それぞれの性格は出ますか?

出ると思います。誰が作るとか、誰が手伝うとか、そういうところでも結構キャラクターが見えますよね。

――力士の言葉で、特に印象に残っている人はいますか?

小滝山ですね。負け越しが続いて、弟の相馬にも番付を抜かれて、それでも相撲を辞めたり腐ったりしないから、「なんでそんなに頑張れるの?」みたいに聞いたことがあるんです。

――小滝山さんはなんと?

「相撲が好きだから」って言ったんですよ。こんなにきつい状況になっても、それでも相撲が好きなんだって。なんか、それはすごく印象に残っているというか。「ああ、好きなこと」があるって素晴らしいなと思いました。

東出昌大、そして二子山部屋――。人の日常を追い続けてきた坂上さんが、次にカメラを向けたのは女子プロレスだった。後編では『仙女魂/日本武道館への道』の舞台裏を聞く。

#2「センダイガールズ 令和のプロレス界に起きた革命」につづく

取材・文/小谷進平(集英社オンライン編集部)