子どもたちには世話になりたくない……
年金受給年齢になるとまず頭を悩ませるのは何歳から年金を受給するかということだ。60歳から受給をするよりも、65歳から受給した方が毎月の受給金額は増える。前出の田中さんはこう続けた。
「本当はもう少し働いてほしかったのですが、夫は60歳からの年金受給を選択しました。『今までがんばって働いてきたから』と、(65歳からの受給を)提案しても絶対に首を縦には振らず。
子育てとかは全て私に任せっきりだったのに。子ども達にも相談してみたのですが、『がんばってきたから働かなくてもいいんじゃない?』と言われてしまいました。
結局、私がパートの時間を増やすことで日々の生活を乗り越えるしかなくて」
たまに遊びに来る孫たちをもてなしてあげたいという思いもあり、田中さんは今も連日パートに出て働いている。今年のシルバーウィークは5連休。孫たちが遊びに来るのでは?と尋ねると……
「『実家に泊まりに行くね』と娘から連絡が来たんですけど、『パートが入っているからいない時間もあるからね』と伝えています。一日中一緒にはいられないけど、顔が見られないよりはマシかな」
年金受給だけでは足りず、「敬老の日」であっても仕事をせざるを得ない。そんな高齢者の増加は、現代社会の切実な課題を示している。困窮の原因は人それぞれだが、共通しているのは、生活保護の申請や子どもに頼ることを躊躇し、肉体的・精神的な限界を抱えながらも自力で生計を維持しようともがく姿だ。
単なる個人の自己責任として片付けるのではなく、高齢者の暮らしを維持するための社会的支援や制度のあり方を深く問い直す時期に来ている。
取材・文/山崎尚哉












