AI相場「第2幕」の条件と、冷静な視線
米大手のAI投資は続いており、AI相場の「第2幕」が始まる可能性は十分に残る。ただし、その主役が再びキオクシア一色になるとは限らない。物色はすでに供給網の各所へ広がっている。
第一に「半導体商社」。海外メーカーから調達し国内に卸すビジネスは、メモリー高騰を販売価格へ転嫁できるインフレ耐性が強みだ。
エヌビディア関連とされるマクニカHD<3132>、サムスン電子の半導体を主力に4〜6月期の売上高が前年同期比39.7%増と急拡大したトーメンデバイス<2737>などが挙げられる。
第二に、装置・素材・部材の「AIツルハシ銘柄」。シリコンウエハーの信越化学工業<4063>や、前工程装置の東京エレクトロン<8035>が代表格だ。
そして第三に、半導体以上の成長ストーリーとして急浮上したのが、データセンターの爆発的な電力需要を支える「電力インフラ」である。
光ファイバー需要でテンバガーを演じたフジクラ<5803>を筆頭に、受変電から発電まで担う総合電機の三菱電機<6503>などが物色対象だ。
これらの多くはバリュー性を備え、金利上昇局面ではむしろ相対的な魅力を増す。一極集中の是正は、相場の裾野を広げる健全な調整でもある。
もっとも、市場が総楽観に傾く局面ではない。「8万円も通過点」という強気論の一方で、株高を支えた2つのエンジン──メモリー景気の需給逼迫と、円安という大安売り──は、いま同時に賞味期限を迎えつつある。
メモリーには供給増と中国勢の反攻が、円安には日銀のタカ派転換と利上げ観測が、それぞれ逆風となって吹き始めた。片方のエンジンが不調でも、もう一方が回れば相場は保つ。だが両方に同時に亀裂が入れば、話は違ってくる。
投資家に欠かせないのは、熱狂ではなく、足元のファンダメンタルズと需給、そして政策の寿命を冷静に見つめる視線だ。
次の焦点は、9月の日銀会合が円安時代の終わりを告げるのか、そしてメモリー価格の高騰がどこまで続くのか──この2点にある。禁断の果実ほど甘美なものはないが、その果実には必ず賞味期限がある。7万円の熱狂の先を見通すには、株価の高さではなく、それを支える構造の耐用年数を測る目が要る。
※本稿は提供資料および株探等の報道をもとにした相場分析であり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。数値・株価水準は執筆時点(2026年9月)のものです。
文/鈴木聖也 写真/shutterstock












