「山高ければ谷深し」──キオクシアの半値化

では、キオクシアはどこに位置するのか。同社が手掛けるのはDRAMではなく、NAND型フラッシュメモリーである。したがってHBMそのものは製造していない。しかし、AIデータセンターは学習データや生成物を保存する膨大なストレージ(SSD)を必要とし、そのSSDに使われるのがNANDだ。

生成AIの普及でデータセンター向けNAND需要が急拡大し、キオクシアの2026年分の生産枠は「完売」状態にあるとされる。キオクシアは、HBMの主役ではないものの、AIが生んだ「メモリー景気」の恩恵を、NANDという別の入り口からフルに享受してきた。

その勢いはなお続いている。キオクシアが7月末に発表した2026年4〜6月期の連結営業利益は前年同期比28倍の1兆2700億円で、AI投資を追い風にメモリー販売は加速している。

ただし市場予想の平均は下回り、同社は1株を3株にする株式分割(10月1日効力発生)も発表した。

8月末には岩手の1兆円超の新工場計画やエヌビディアの好決算を材料に株価が再び買われる場面もあったが、9月上旬の株価は5万円台にとどまり、6月のピークのなお半値水準である。「予想に届かず」という一点が、熱狂の質的な変化を物語る。

そして、ボーナスステージの終わりを告げる兆しも増えてきた。供給側ではマイクロンが広島工場に1.5兆円を投じ、メモリー各社が相次いで増産投資を打ち出した。DRAM世界4位の中国CXMTも7月に上海・科創板へ上場し、国産化政策を追い風に供給力を高めていく。

需要側でも、8月下旬のエヌビディア決算は好感されつつも「祭り」には至らず、むしろAI投資の鈍化懸念がくすぶった。指数がAI・半導体という一本足に依存している以上、この一極集中こそが最大の構造リスクだ。

「山高ければ谷深し」──キオクシアの半値化は、その相場格言をそのまま体現している。

写真はイメージです
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